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プーチン大統領 「日韓への電力輸出推進」を提唱。3か国で作業部会設置求める。サハリンでの水力発電電力等を海底ケーブルで送電構想も。すでにFS等進む(各紙)

2016-09-03 15:14:32

rosia2キャプチャ

 

 各紙の報道によると、ロシアのプーチン大統領は3日、ウラジオストックで開いた東方経済フォーラムで演説し、日本と韓国、ロシアを結ぶ送電網構想を提唱。実現に向けて3か国の政府間での作業部会の設置を提案した。

 

 プーチン大統領は、日韓などアジア各国へのロシアからの電力輸出について「競争力のある価格で提供できる用意がある」と述べ、実現を目指す考えを示した。

 

 日本を含む北東アジアを海底の送電網でつなぐ「エネルギーブリッジ構想」については、日韓とロシアなどの企業が現在、実現可能性を協議している。プーチン大統領は、極東地域の投資環境の改善策としては、高止まりしている電気料金をロシアの全国平均にまで下げる方針を示した。

 

 日本にロシアの電力を輸出する案は、1990年代後半から出ている。当時、「RAOロシア統一エネルギー・システム」の幹部が提案。「アジアのスーパーリング」と名づけたプロジェクト(1998~2000年)が検討された際は、日本とロシアの電力ブリッジ建設案についての初めて話し合いが行われたという。

 

 ただ、送電に伴う技術的な課題、日本の電力事業の法制度の壁など多くの難問があり、進展しなかった。また日本は国内の小売電力自由化という電力制度改革に注力していたことで、海外からの参入案は長い間、忘れられていた。

 

 だが2014年ころから、海底送電線敷設に関する協議が公にされ、日ロ投資フォーラムでも協議されるまでになった。 ロシアの水力発電会社の「ルスギドロ」の極東地域の子会社、RAO東エネルギー・システムは、サハリン国営地域発電所2(GRES-2)の建設事業の一環に日韓への電力輸出の検討を盛り込み、FS(フィージビリティ・スタディ)も実施している。

 

 ロシアの情報サイト、スプートニクの報道では、RAO東エネルギー・システムはプロジェクトを複数段階に分けて検討している。第1段階(2020年まで)では、サハリン島電力発展決定案に基づき、最大500~600MWの輸出を保障する。

 

 第2段階では、日本への輸出用として、最大1GWの追加的発電設備をサハリンに建設する。第3段階では、東部統合エネルギーシステムと、主要な孤立網を海底ケーブルでつなぎ、統一構造「ハバロフスク地方-サハリン」を創設する。日本向け輸出は2~4GWが可能という。プロジェクトの総費用は56億ドル(約5600億円)。

 

 サハリンにはすでに天然ガスを日本に輸出するためのパイプラインが敷設されており、送電網の敷設もパイプライン沿いに行うことは可能。サハリン南端から北海道までの距離は40kmなので、海底ケーブルの建設に大きな困難はない。

 

 ただ、日本の電力需要地は北海道よりも本州であり、輸入した電力を有効に活用するには青函トンネルの送電網を強化するなどの追加投資が必要となる。あるいは、海底ケーブルを一気に首都圏にまで敷設する案も考えられる。その場合はケーブル敷設コストが課題となる。北海道の場合、現在も風力などの再生可能エネルギー発電が増加しているが、送電能力の限界で、本州への送電が十分できないという課題を抱えている。

 

 欧州連合(EU)などでは電力・エネルギーの輸出入が活発に行われている。しかし、わが国政府のエネルギー政策では、電力輸入は想定されていない。ロシア産電力が安定的に安価な供給が可能ならば、わが国のエネルギー政策において、どう位置づけるかの議論を早急にする必要がある。

 

 プーチン大統領が日本だけでなく、輸出対象先を韓国も名指ししたことは、日本の対応が鈍いようだと、ビジネスライクに、韓国に輸出先を切り替える準備もあることを示唆している。

 

https://jp.rbth.com/business/2014/07/15/49111