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国際エネルギー機関(IEA)の「2016年世界エネルギー投資」レポート。投資総額は8%減の1.8兆㌦。化石燃料開発投資25%減が影響。再エネ・省エネ・電力網投資が着実に増加(RIEF)

2016-09-21 17:24:06

IEA3キャプチャ

 

  国際エネルギー機関(IEA)は、2015年の世界全体のエネルギー投資額が前年比8%減の1.8兆㌦(189兆円)だったと公表した。石油・ガス等の化石燃料関係の開発投資が同25%減少したことが大きい。再生可能エネルギーと省エネルギーに加えて電力ネットワークに対する投資額は増加した。

 

 化石燃料はエネルギー投資全体の55%と、依然過半数を占める。ただ、比率は火力発電所と合わせても前年の61%から6 ポイント低下した。これに対して再エネ投資は16%から17%へ1ポイント上昇したほか、省エネ投資は10%から12%、電力設備ネットワーク投資は12%から14%へと、いずれも上昇した。確実に低炭素化がグローバルベースで進行していることを示す。

 

 石油、ガスへの投資総額は、5830億㌦で資源別の絶対額としては引き続き最大となったが、前年比25%減と、大きく減った。2016年も24%の下落が見込まれている。この結果、3年間で約2500億㌦(約26兆2500億円)分、投資規模が縮小したことになる。

 

 再エネ投資額は、風力、太陽光のほか、バイオ燃料、太陽熱などを含めて3130億㌦。2011年~2015年を通してみると、投資額はほぼフラットになっている。これは太陽光などの設備価格の下落と発電効率向上の技術進歩によるもので、再エネ設備量全体はこの間、約40%増加し、発電量も3分の1増加しているという。

 

   

 

 

 発電設備全体への投資額は4200億㌦で、このうちバイオ燃料、太陽熱を除いた再エネ発電投資でみると2880億㌦で、全体の70%を占める。ガス火力への投資額は前年比40%下がって310億㌦、石炭火力は約25%増加し780億㌦だった。石炭火力投資は他の国では減少傾向にあるが、中国国内での投資増が全体を押し上げた。

 

 再エネ投資が増えるにつれて、電力ネットワークをの投資も増え、14%増の2600億㌦(約26兆円)となった。ネットワーク投資額のうち55%はネットワークの新設、35%は既存ネットワークの更新、残り10%は再エネ電力のネットワーク接続やネットワークのアップグレードに投じられた。

 

 特筆されるのは電力ネットワークへの蓄電池の増強投資だ。15年の投資額は10億㌦だが、2010年に比べると10倍に増加している。電力の蓄電池投資の10%がネットワークに投じられている計算だ。

 15年に新たに追加された原発による電力は10GW以上で、投資総額は210億㌦。中国での発電開始が大半で、建設中の原発は世界全体で70GWに上っている。

 15年に世界中で運転を開始した発電設備のCO2排出係数は平均で420kg-CO2/MWhだった。従来の発電設備の平均値(530kg-CO2/MWh)から20%も少なくなっている。ただ、パリ協定で合意した2℃目標を達成するには、100kg-CO2/MWhが必要。しかも、前年のCO2排出係数に比べると、15年の係数は中国の石炭火力増加等の影響で、増加している。

 

 中国は再エネ投資も増えているが、石炭火力も増えるという課題を抱えてる。日本のCO2排出係数は2014年度の時点で平均579kg-CO2/MWh。2015年度は火力発電の減少によって若干の低下が見込まれるが、それでも世界平均に比べてかなり高い水準にある。再エネ、省エネの推進、石炭火力の抑制が求められる。

 

http://www.iea.org/Textbase/npsum/WEI2016SUM.pdf