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テレーザ・メイ英首相 国連本部で、パリ協定への英国の年内批准を宣言。EU全体の批准作業に刺激。批准国数は60カ国で、協定の条件満たす(RIEF)

2016-09-22 00:09:46

mayキャプチャ

 

 21日、ニューヨークの国連本部で開いた気候変動対策の「パリ協定」の会合で、欧州連合(EU)から離脱を表明している英国のテレーザ・メイ首相が、年内に協定批准することを明言した。国連によると、新たにブラジルなど31カ国が同会合で批准を報告、批准国は60カ国となり、二つある発効要件の一つである国数の条件(55カ国)を達成した。

 

 メイ首相は国連での初演説で、英国の気候変動問題に対する積極的な姿勢を堅持することを強調、「国内の批准手続きを年内に完了できるよう準備を進める」と述べた。メイ首相は就任以来、温暖化対策には明確な判断を示してこなかった。だが、米中が批准したことと、EUより先んじて英国が批准することの政治的アピールを重視したとの見方もできる。

 

 パリ協定の発効条件は、批准各国の温室効果ガスの合計が世界の総排出量の55%以上を占め、かつそれらの国が55カ国以上という二重の要件が示されている。これまで28カ国、約39%の排出量が対象となってきたが、今回、31国が新たに批准を報告したことで60カ国となり、国別要件は満たされた。

 

 もう一つの排出量要件は、追加の31カ国分を加えても47.76%で、50%に達していない。だが、英国の批准方針に加えて、世界の排出量全体の10%強を占めるEUも、課題となっている加盟国間での配分問題を先送りして、批准を最優先する見通しが出ている。英国の今回の批准明言も、EU各国にとっては刺激となりそうだ。

 

 メイ英首相は「年内の英国の批准対象」として、EU内でのBurden-sharingの配分となる英国分の批准なのか、EUがパリ協定で約束した削減率とは別に、離脱を前提とした英国独自の削減率とするのかといった手続き面については、明確には言及していない。

 

 EU内では、すでにパリ協定を主催したフランスが、6月に協定に批准している。今回の英国の対応を受けて、EU内では加盟国間の配分問題とは別に、国内対応の進む国は順次、批准の国内手続きを進める個別方式で、パリ協定の年内発効に協力するアプローチが現実路線として進む可能性が強まってきた。

 

 英国を含むEUの主要排出国が批准すると、排出量要件の達成も実現する見通しだ。各国の足並みがそろうと、11月にモロッコ・マラケシュで開く国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)で、協定の正式発効宣言ができる可能性もある。