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東電福島第一原発 台風で汚染未処理水漏えい問題。港湾内でのセシウム137の濃度上昇を東電が軽視。「過去にも同様の傾向」と。「すでに高濃度で汚染された地域」との先入観が露呈か(各紙)

2016-09-24 23:58:03

fukushima2キャプチャ

 

 台風16号の影響で、東京電力福島第一原発内の地下水ドレンの水位が地表面を上回り、未処理の地下水の一部が、港湾に流れ出た問題で、東電が港湾内で採取された海水の放射性物質濃度の評価を矮小化していたことがわかった。

 

 今回の未処理地下水の漏洩によって、港湾内の2地点でセシウム137の濃度が最高値を更新した。「1号機取水口」のセシウム137濃度は1㍑当たり95ベクレル、「1~4号機取水口内北側」で同74ベクレルだった。http://rief-jp.org/ct13/64540

 

このうち、「1号機取水口」の濃度は、東電が水質管理の目標とする排水基準「告示濃度限度」の同90ベクレルを超えている。

 

 しかし、東電が報道機関向けに配布したメール情報では、「最近の変動から見るとやや高めの傾向」「過去の降雨時にも同様の傾向がみられており」などと表記、最高値を出したことは記載せず、平常値であるかのような印象を伝えていた。

 

 現場の記者から、表現について疑問が出たことから、東電の広報担当者は23日、「もう少し適切な表現があった」と不適切な表現だったことを認めた、という。しかし、担当者は、降雨時に放射性物質濃度が上昇する最近の傾向の範囲内で「有意な変動ではないと判断した」と釈明した。

 

 東電によると「有意な変動」とは、放射性物質濃度が10倍以上に上昇した場合を指す、という。ただ、港湾の2か所で過去最高のセシウム値を検出したことは、未処理の放射能汚染地下水が、港湾に流出したことを示す明確な証拠である。

 

 東電がやるべきことは、こうした漏えいが生じないよう、地下水ドレンの拡張か、地下水を吸い上げるバキューム車の能力を増強するレベルアップした監視・処理体制を早急に構築することだろう。

 

 別の広報担当者は「(高濃度の汚染水が漏えいした)事故直後はもっと高かった」と述べたという。つまり、事故発生時以来、もっと高濃度のセシウム等が大量に港湾や海洋に流出した事実から、「100ベクレル未満のセシウム濃度は、いまさら、どうってことはない」と軽視しているのかもしれない。

 

 これまでも台風や豪雨のたびに、未処理汚染水が港湾などに漏えいするというケースが頻繁に発生している。「もうすでに汚染された地域」と、東電職員が判断し、多少の放射性物質濃度の変動は許容する姿勢が蔓延しているとすれば、「事故を発生させた当事者の東電」に、事故処理や監視を委ねる現在の体制自体に、追加汚染を許すあいまい性がある、と言わざるを得ない。

 

 また、今回の福島第一原発での未処理汚染水の漏洩と、そのことを軽視する東電側の発言の背景には、事故発生から5年半を過ぎ、炉心溶融処理の見通しも一向に立たない状況が続く中で、「非日常」が「日常」になってしまったフクシマ現場の歪みがあるといえる。

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2016/images2/handouts_160923_05-j.pdf