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米ワシントン州 来年から温暖化対策の排出権取引制度(C&T)実施へ。対象は発電所、金属製造、天然ガス輸送、石油燃料製造・同輸入など。カリフォルニア州などともリンク(RIEF)

2016-09-26 00:13:16

 

  米国のワシントン州が来年初めから、州内でCO2の排出権取引制度(C&T)をスタートさせる。同制度導入のためのClean Air Ruleを定めた。同州のC&T制度導入は2007年に宣言されていたが、ようやく10年を経て実現する。カリフォルニア州などともリンクする。

 

 シアトルが州首都のワシントン州は、農業生産高の多い州。しかし、気候変動の影響で、農業収穫の変化のほか、渇水や山火事の多発、降雪の減少による飲料水への影響などの課題を抱えている。気候変動を抑制する必要性は、州経済の将来を左右する課題でもあるのだ。

 

 このため、2007年に、カリフォルニア州などの西部各州やカナダの州とともに、州間でのCO2排出権取引を行う「Western Climate Initiative」の立ち上げに参加した。同州は2008年に制度導入の州法Clean Air Actを成立させている。

 

 しかし、その後、2008年のリーマンショックの影響に伴う経済低迷によって多くの州がInitiativeから離脱。同州も、法律に基づくClean Air Ruleの制定が延び延びとなっていた。

 

 だが温暖化の影響は止まらない。同州は引き続き制度導入を模索してきた。現知事のジェイ・インスレー(Jay Inslee)氏は2015年にRule化の加速を指示、今年になって新たな改正案を提案していた。同案に対して、議会や市民団体、産業界等の賛同をほぼ取り付けた。

 

 新たに導入するC&T規制の対象は、年間10万㌧以上のCO2を排出している州内の発電所、金属製造、天然ガス輸送、石油燃料製造と同輸入、廃棄物施設、そして州と連邦の施設。それぞれに3年間(第一期)の間に、年1.7%ずつの削減をするという排出量規制(キャップ)が割り当てられる。

 

 規制通りの削減を達成できない事業体は、超過達成をした他の事業体や、他のC&T制度から、オフセットクレジットを購入して規制対応ができる。対象事業体の排出量の評価などは、州が監督する独立の監査機関が評価する。同州は、2035年までに州内のCO2排出量を90年比で25%削減し、2050年にはさらに50%削減を目標としている。

 

 州のエコロジー局の Maia Bellon局長は「ワシントン州は、歴史上、一大転機に立った。温室効果ガス削減のために、強くて実践的な計画を採用できたことは、われわれが気候変動との闘いで負うべき公正なシェアに対応し、リーダーシップを担うことになるだろう」と述べている。

 

 ワシントン州がC&T制度導入をほぼ確実にしたことに対して、排出権取引システムの国際的な普及を進めている国際排出権取引協会(International Emissions Trading Association:Ieta)北米担当のKatie Sullivan氏は「インスレー知事とエコロジー局の努力を高く評価する。他の州とのリンクにも期待している」と、「Western Climate Initiative」の復活への期待を示した。

 

 米国西海岸では、カリフォルニア州が独自のC&T制度を稼働させ、カナダのキューベック州との間で州間取引を行っている。ワシントン州がリンクに参加すると、東海岸でニューヨーク州など9州が実施している発電所を対象としたC&T制度のRegional Greenhouse Gas Initiative (RGGI)と、東西で地域間C&Tシステムが並立することになる。

http://access.wa.gov/