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主要国のCO2排出量への価格付け対策、本来の気候変動コストを反映していない事例が90%に。カーボン税か排出権取引による適正価格付けがパリ協定発効後の政策課題に。OECDが指摘(RIEF)

2016-09-29 12:46:18

OECDキャプチャ

 

  経済開発協力機構(OECD)は気候変動対策を進めるうえでカギとなるCO2排出量への価格付けが進んでいないとする報告書をまとめた。先進国・新興国の排出量の90%分が、本来の気候変動コストを反映した価格になっていない、と指摘している。パリ協定の年内発効が確定的になる中で、カーボンへの適正価格付け政策の導入が次の焦点になってきた。

 

 OECDは今回の調査で、34の加盟国のほか、中国、インドなどのBRICS5か国とアルゼンチン、インドネシアを加えた41カ国において、6つの経済セクター(道路、産業、電力、道路以外輸送、商業&居住区域、農業&漁業)でのカーボン価格付けの実態を調べた。これら41カ国は世界の温室効果ガス排出量の80%を占める。

 

 報告書は「Effective Carbon Rates:Pricing CO2 through taxes and emissions trading systems」と題した。CO2への価格付けの手段は、税金あるいは排出権取引が知られている。しかし、カーボン税は、CO2排出量に応じた税率の設定が難しい。排出権取引は、CO2排出量の多い産業等を対象とした総量規制(キャップ)が前提となるため、経済界の反対が強いことなどが、各国で課題となっている。

 

 対象となったすべての国と分野で実施されている平均的実効カーボン価格(ECR)は、CO2排出量1㌧当たり14.4ユーロ(約1627円)だった。価格付けの制度は93.1%が石油などに課税する物品税、1.3%がカーボン税、5.6%が排出権取引による。

 

 報告書は、こうした平均実効カーボン価格(ECR)と、温暖化を防止するために必要な排出量の実質削減コストのうち、もっとも低いレベルであるトン当たり30ユーロ(3390円)との差を、「carbon pricing gap 」という新たな指標とした。その結果、現在のgapは41カ国平均で80.1%とはじいた。

 OECD2キャプチャ

 

 そのうえで、対象国のうち経済指標等で中間値の水準となる国のカーボン価格と分野別の範囲を一定の条件として、中間値以上の国々が実施してきた政策対応を、すべての国々が実施すると仮定すると、 carbon pricing gap は 80.1%から53.1%へ改善することになる。

 

  OECDのAngel Gurría事務局長は、「この調査結果は、たとえ温和的な価格付け対策であっても、低炭素社会に移行しようとする国々に大きな影響を及ぼす」と指摘している。そして、「税か排出権取引などでカーボンへの価格付けができれば、CO2削減のためのもっとも効果的なツールの一つになる」と価格付け政策の必要性を強調した。

 

 また、価格付け政策の重要性は、エネルギー使用の削減のきっかけとなるほか、エネルギー効率化を改善、エネルギー使用に際して、よりクリーンな電源の確保などの動きを後押しする。Gurria事務局長は「カーボンへの価格付けは、価格を適正化する方向で進むだろう」とも語っている。

 

  エネルギー使用で排出されるCO2の60%は現在のところゼロ価格となっている。温和的な30ユーロ以上の価格の対象となっているのは、排出量の10%に過ぎない。このことは、エネルギー使用への価格付け政策の必要性を示唆している。

 

 道路交通によるCO2排出量については対象となった41カ国ではCO2排出量の46%は30ユーロ以上の価格が付けられている。この道路交通からのCO2をエネルギー利用全体の排出量から除外すると、エネルギー使用でのゼロ価格は70%にまで増え、30ユーロ以上のケースは4%に低下する。

 

 現在の価格付け政策は国によって大きな差がある。41カ国のうち最も高い価格政策を導入している10カ国が占めるCO2排出量は全体の5%。これに対して、最も低い価格政策しか導入していない10カ国の排出量は全体の77% を占めており、価格付け政策が限定的なレベルにとどまっていることを示している。

 

http://www.oecd.org/tax/effective-carbon-rates-9789264260115-en.htm