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JAXA 宇宙太陽光発電システムの実験で、レーザーでの上下間のエネルギー伝送に成功。送られたエネルギーで、ドローンを飛ばす。実用化は2030年以降(RIEF)

2016-10-12 12:45:48

spacesolarキャプチャ

 

  宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙空間で発電した太陽光エネルギーを、マイクロ波やレーザー光に変換後、地球に伝送して電力として利用する「宇宙太陽光発電システム(SSPS)」の要素技術の実証試験に成功したと発表した。

 

  宇宙太陽光発電システム(SSPS: Space Solar Power Systems)は、宇宙空間で、太陽光エネルギーをマイクロ波またはレーザー光に変換して地球に伝送し、電力として利用するシステム。エネルギー、気候変動、環境等の人類が直面する地球規模の課題解決の可能性を秘めている。

 

 システムを実現するには、マイクロ波やレーザー光による無線エネルギー伝送技術や、宇宙空間に1Gクラスの大規模発電施設を「宇宙発電所」として構築する技術等が必要になる。発電所のサイズは、kmクラスになるという。このため、SSPSの実用化は2030年代以降の次世代技術と位置づけられている。

 

 今回、実施したのは、宇宙と地上との間のレーザーによる無線エネルギーの伝送を、地上で再現する実験。レーザーは、ビームの広がり角が小さく、長距離伝送に適している。また装置を小型化しやすい利点がる。半面、雲や雨によってさえぎられたり、大気によって揺らぐ性質もある。また人(特に眼)へのと危険性があるので、安全基準が厳しく設定されているなどの課題がある。

 

 特に、大気中では、大気の揺らぎが生じ、地上の検出器に入るレーザー光の位置がずれる現象が起きる。このため、レーザー光を正確に決まった場所に照射するシステムの開発が必要になる。今回は、その課題の検証として、地上と高さ200mの実験棟の屋上で電力を伝送、飛行ロボット(ドローン)を飛ばすことに成功した。

 

 JAXAはこれまで、水平方向で500mの伝送実験に成功している。しかし、日照が強い場合に、地上付近で大気かく乱が悪化する条件では、課題を残していた。今回は、宇宙から地上への伝送と類似した上下方向での実験にチャレンジ、成功したことになる。

 

実験には、川崎重工業と日立ビルシステムも協力した。茨城県ひたちなか市にある日立製作所水戸事務所にある高さ約200mの実験塔を利用した。塔の屋上に、衛星に相当する「ダウンリンクユニット」、地上に方向制御精度の計測などを担う「アップリンクユニット」を設置し、200m離れた場所へ電力を供給した。

 

 その結果、レーザー出力340W、直径1mm程度の範囲内でレーザー光の方向を制御できた。光電変換装置において電力伝送効率が21.3%となることも明らかにした。今後、効率35%を目指すという。

http://www.ard.jaxa.jp/research/ssps/ssps-lssps.html