HOME5. 政策関連 |東京・豊洲市場 地下の大気空間から、国指針の7倍の水銀検出。土壌汚染浄化工事の不徹底が決定的に。汚染リスクは今後も継続の可能性高まる(RIEF) |

東京・豊洲市場 地下の大気空間から、国指針の7倍の水銀検出。土壌汚染浄化工事の不徹底が決定的に。汚染リスクは今後も継続の可能性高まる(RIEF)

2016-10-16 01:20:40

toyosu2キャプチャ

 

 東京都の豊洲市場(東京都江東区)の安全性を検証する専門家会議は15日、築地市場内(中央区)で開いた初会合で、豊洲市場の地下空間の大気から最大で国が定める指針の最大7倍の水銀が検出された、と発表した。

 

 都の発表によると、先月29~30日と、10月6~7日の2回にわたって豊洲市場の建物の地下空間と、1階部分、屋外でそれぞれ大気汚染調査を実施した。その結果、青果棟の地下3か所で、国が定める水銀の指針値(年平均値で1㎥当たり0.04μg以下)の5~7倍に当たる0.20~0.028μgの値を検出した。

 

 また水産卸売場棟の地下2か所からも、指針値をわずかに上回る値を検出した。水銀以外の汚染物質のベンゼンとシアンは、今回は全地点で基準値を下回るか、不検出となった。

 

 専門家会議の委員からは「考えられない現象」との意見が上がった。また大気からの検出については、地下空間に溜まった水に含まれる微量の水銀の揮発や、工事の過程で発生した可能性が指摘された。専門家会議は今後、地下空間を換気した後の再観測や、施工業者への聞き取りなどを検討する。

 

 これまでの調査で、水産仲卸売場棟と水産卸売場棟を結ぶ連絡通路の地下から、環境基準を710倍上回るベンゼンが検出されたほか、シアン化合物の汚染も明らかになっている。

 

 水銀の指針値については、環境省の中央環境審議会が2003年に、「短期的に上回る状況があっても、直ちに人の健康に悪影響が表れるようなものと解するべきではない」との判断を示しているという。しかし、直ちに健康に悪影響が表れないとしても、長期的な暴露を受けた場合や、人に影響が全くないと言い切れるわけでもない。

 

 豊洲市場の土地については、元の所有者の東京ガスが、東京都に売却する前に掘削除去を実施、さらに都は譲渡を受けた後に、自ら追加浄化工事を実施してきたはず。それでも、水銀、ベンゼン、シアン化合物などが、大気や溜り水等から引き続き検出されていることは、土壌汚染工事が不十分だったとみるのが普通だろう。

 

 土壌の浄化が不十分な土地を、わざわざ高値で買い取って、生鮮食料品や魚類等を扱う都民の台所にするシナリオは、一体、誰のために描かれてきたのか。少なくとも都民や、食料品等を取り扱う市場関係者のためではないように思える。

 

 15日付で就任した都の中央卸売市場長の村松明典氏は「食の安全・安心に不安を抱かせ、都政への信頼を著しく損ねた。心よりお詫び申し上げます」と述べた。だが、多くの都民は、この謝罪を「口先だけ」と受け取ったのではないだろうか。

 

 都民が都の役人に対して持つ不信感を払しょくするには、都民が不安に感じる豊洲市場の汚染された土壌を徹底的に浄化するか、それができなければ、別のきれいな土地に移転し直せ、ということではないか。その費用が高いからとして、「不安と不信」の豊洲市場を押し通すということは、結果的に、もっと多くの費用を都民に強いることにつながらないか。