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台湾の蔡英文政権 2025年に域内の全原発廃炉の「脱原発」を決定。再エネ発電重視へ舵を切る(各紙)

2016-10-23 21:34:36

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 各紙の報道によると、台湾の蔡英文(ツァイインウェン)政権は、現在、稼働中の3基の原発を2025年までに停止し、「原発ゼロ」にすることを決めた。内閣に当たる行政院は20日、再生エネルギー事業への民間参画を促す電気事業法の改正案を閣議決定、年内の可決を目指す。アジアの原発保有国で原発ゼロへの転換を明確にしたのは、同国が初めて。

 

 台湾では現在、4つの原発基地があり、各2基ずつ、合計8基の原発がある。このうち、首都台北に近い北部の第一~第二原発と、最南端にある第三原発では、それぞれ1基ずつしか稼働していない。新たに建設が進められていた第四原発は反対運動によって稼働前に2基とも停止に追い込まれている。

 

 世界では東電福島原発事故後に、ドイツが2022年までの原発全廃を決めたほか、スイス、イタリア、オーストリアなどの各国が原発全廃を打ち出している。ただ、アジアの原発保有国で「脱原発」を明言したのは台湾が初めて。未曽有の原発事故を起こした日本が、安倍政権の下で、各地で再稼働に向けて動いているのとは対照的に、日本を「他山の石」とする国々は、脱原発に歩を進めているといえる。

 

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 稼働中の3基の原発による発電は台湾全体の発電容量の14.1%(2015年)に相当する。8基中3基しか稼働していないのは、日本の東電原発事故の影響で、台湾全土で反対運動が展開されてきたため。5月に就任した民進党の蔡政権は「原発ゼロ」を公約にしていたことから、公約を実現するステップを打ち出したことになる。

 

 現在、稼働している3基はすべて2015年までに40年の稼働期間を満了する。閣議決定された電気事業法改正案は同年までに全原発停止することを明記した。日本のように、一部原発を40年後も稼働延長することはできなくなる。

 

 

 原発の発電分については、代わりに太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電量を増やし、現在4%前後の再エネ比率を20%にまで高めることを目指す。効率的な再エネ電源の送配電のため、電力事業の発送電分離も実施する。

 

 電力改革では、これまで独占の台湾電力が電力事業を基本的に提供してきたが、同社を発電会社と送売電会社に分割し、再エネによる発電と売電事業については民間に開放する。送電事業は台湾電力が引き続き提供する。その後、再エネ以外の電力事業についても将来開放する方針という。

 

 再エネ以外では、石炭火力が30%、天然ガス火力が50%という割合で、化石燃料シフトの解消には至らない。再エネについては、太陽光発電を重視し、今後2年間で152万kW分を増設する目標を立てた。電力購入価格を20年間保証する固定価格買い取り制度(FIT)や融資優遇策などで民間投資を呼び込む。

 

 

 台湾の第一、第二原発は台北中心部から20kmと人口密集地に隣接していることから、福島事故の以前から反対運動の対象となってきた。建設中だった第四原発も、福島原発事故後、同様に地域住民からの懸念の対象となっていた。馬英九前政権は第四原発の建設を2014年に凍結したものの、建設自体を断念したわけではなかった。今回の蔡政権の決断で、稼働しないまま廃炉になることが確定した。

 

 原発による発電量を再エネ発電の増加で計画通り肩代わりできるかは、今後の動向次第との見方もある。台湾には電力を大量消費する製造業などの産業が多いこともあり、蔡政権では再エネ発電が拡大するまでの間、産業向けに電力需要のピークカットなどの対策を求めるほか、家庭に対しても、省エネ・節エネ化を進めていく方針という。

 

 再生エネ発電については太陽光と洋上風力を中心とする方針で、太陽光発電はパネル価格の低下が急速に進んでおり、経済的にも採算が合うとみられている。また台湾海峡を中心に、一定の風力が確保されることから、洋上風力発電の開発に力を入れる方針。洋上風力については、日本企業との協力への期待も高いという。

 

 李世光・経済相は「問題は再エネで原発の発電分を代替できるか、ということではない。原発が出す放射性廃棄物による影響を子孫に負担させないために、適正な政策をとることだ」と述べている。