HOME5. 政策関連 |国際海運のCO2規制、2023年に先送り。中国、インドなどの反対で。便宜置籍船国の扱いも定まらず。国際航空の「2020年水準の排出量維持合意」と対照的に。(RIEF) |

国際海運のCO2規制、2023年に先送り。中国、インドなどの反対で。便宜置籍船国の扱いも定まらず。国際航空の「2020年水準の排出量維持合意」と対照的に。(RIEF)

2016-10-31 22:21:29

IMOキャプチャ

 

  国際海事機関(IMO)は、国際間の船舶運航から出る二酸化炭素(CO2)排出削減目標策定の「包括戦略」を、当初案の2018年から5年後の2023年に実施することで決着した。19年から3年かけて国際船舶の燃料データを集めて決定するとしているが、事実上の先送りで、環境団体などは強く批判している。

 

 先週末、ロンドンで開いた海洋環境保護委員会(MEPC70)では、金曜の未明(午前1時30分)にまで交渉が続き、米、中国、インド、パナマなど45カ国の間の妥協として、当初案を先送りすることが決まった。

 

 国際船舶の温室効果ガス排出量は、国際航空とともに、京都議定書の対象外だったほか、パリ協定でも個別協議の対象とされている。このうち国際航空は、10月初めに国際民間航空機関(ICAO)で、各国の国際線の航空機の飛行中の温室効果ガス排出量を、2020年水準で維持する基準の導入で合意した。

 

 これを受けてIMOでもパリ協定に沿った形での合意が期待されていた。欧州連合(EU)や温暖化の影響を強く受ける国々などが、2018年に排出戦略を打ち出すことを強く主張。これを受けてIMOのドラフト案もパリ協定やICAOなどとの整合性を意識して、2018年の戦略策定を目指した。しかし、海運需要への依存度の大きい中国、インドなどが、消極的な姿勢で対立を続けた。

 

 また、パナマなど便宜置籍国を多数抱えている小国なども、温暖化規制で便宜置籍船が減少する懸念を示し、議論の混迷に拍車をかけた。その結果、先送りが大勢となり、実質的には2023年スタートに先送りした。

 

 早期の規制を求めてきた環境NGOなどは、こうした先送り決定に強く反発している。WWF英国の海洋担当者のSimon Walmsley氏は「合意には違いない。しかし、23年まで決定しないということは、IMO自体が全く緊張感を欠いていることの表れだ。国際海運の燃料消費の記録と認証の作業は19年までに十分把握が可能」と批判している。

 

  Clean Shipping Coalitionの代表、John Maggs氏も「パリ協定に対する十分な反応がみられない。今、最も緊急に求められていることは、温暖化を安全なレベルにとどめるための排出抑制の規模を明確にすることだ」と指摘している。

 

 IMO事務局長の Kitack Lim 氏は「今回の交渉は、IMOが国際海運からの温室効果ガス排出量の削減を実現することを引き続き推進する役割を担っていることを証明した」とだけ語った。23年への先送りは170カ国以上が賛同した形となった。

 

 国際海運による温室効果ガス排出量は、世界全体の排出量のほぼ3%を占めている。決して小さくはない。しかし、これまで既存の船舶を含めた排出量の削減方法を巡って議論が続いてきた。2014年のIMOの分析では、世界経済の拡大により、今後、排出量は2050年には現在よりも50%~250%増えると予想されている。

 

 IMOでは同時に、船舶の燃料から発生する硫黄酸化物規制について、現行の3.5%から2020年には0.5%にまで引き下げることでは合意した。IMOはこの合意によって、毎年数千人の死者の減少が期待できるとしている。

 

http://www.imo.org/en/Pages/Default.aspx