HOME4.市場・運用 |都道府県の温室効果ガス排出量削減目標 2030年以降の目標策定は23自治体だけ。石川、福井、佐賀の3県は2010年以降目標更新せず。都道府県の対応に大きなバラつきあり。気候ネットワークの調査で判明(RIEF) |

都道府県の温室効果ガス排出量削減目標 2030年以降の目標策定は23自治体だけ。石川、福井、佐賀の3県は2010年以降目標更新せず。都道府県の対応に大きなバラつきあり。気候ネットワークの調査で判明(RIEF)

2016-11-02 18:45:05

KIKOキャプチャ

 

 環境NGOの気候ネットワークは、コンサル企業のE-konzal(大阪)と共同で、各都道府県の温室効果ガス(GHG)排出量削減目標を評価する報告をまとめた。その結果、47都道府県のうち24の道府県で、2030年以降の中長期削減目標を設定しておらず、石川、福井、佐賀の3県は2010年に削減目標を設定して以来、更新がなされず、事実上、削減目標がない状態になっているという。自治体の温暖化対策のバラつきが浮上した。

 

 調査は各都道府県が公表している「地球温暖化対策実行計画」を比較検証し、GHGの削減目標と過去の排出量を調べた。これらのデータを元に、2020年と30年の排出量見込みを試算した。

 

 その結果、47都道府県のうち36都道府県で2020年目標を、13都府県が2030年目標を、そして10府県で2030年よりも長期の目標を設定していることがわかった。しかし、逆に、2030年以降の中長期目標を設定していない都道府県は24に上り、特に石川、福井、佐賀の3県は2010年を目標として策定降、実行計画は更新されておらず、「現時点では削減目標のない状態」(報告書)という。

 

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  将来のGHG排出量の試算結果では、すべての都道府県で1人当たりGHG排出量が、2012年から変化がない状態が続いても、2020年の排出量は国が定める2020年目標と同程度の削減が可能となる。これは国の2020年目標が低いためという。

 

 2030年については、2030年以降の目標を設定している都道府県が、目標どおりに削減できれば、30年以降の目標を決めていない都道府県のGHG排出量が現状あるいは2020年目標から変わらず推移したとしても、日本全体では2012年比25.6%削減(1990年比17.2%減)となり、国の削減目標(2013年比26.0%減、12年比25.0%)を達成できることになる。

 

 これは東京都や長野県、京都府などの一部の自治体が、国よりも高い2030年の削減目標を掲げているほか、30年以降の長期目標を掲げている自治体が「削減率80%」などの大幅な目標を立てていることが影響しているという。

 

 パリ協定では各国の自主的な削減目標を実行するだけでは、産業革命前からの世界の気温上昇を2℃未満に抑制することは困難で、追加削減が必要になると指摘されている。日本の都道府県の計画は30年目標を明確にしている自治体は半分以下なので、都道府県全体では「削減伸び代」がまだあるといえる。

 

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 1990年から2012年にかけてGHG排出量がもっとも減少したのは、宮崎県で33.7%減と大幅減少になっている。これは同県延岡市を拠点とする旭化成グループが、ナイロン樹脂の原料となるアジピン酸の製造工程で大量に発生する亜酸化窒素(N2O)を、分解するプロセスを開発したことが功を奏した。N2Oの温暖化係数はCO2の310倍にもなる。

 

 宮崎県を含め、GHG排出量が減少したのは7府県だけで、47都道府県全体では排出量は9.4%増となっている。

 

http://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2016/11/regional-ghg-emission-target-report.pdf