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「パリ協定」 今日(11月4日)発効。だが、各国の削減約束をすべて実行しても、世界の気温上昇は2℃に収まらず、2.9~3.4℃に上昇。排出量の4分の1の追加削減必要。国連UNEPレポートが指摘(RIEF)

2016-11-04 01:19:11

UNEPキャプチャ

 

  地球温暖化対策のパリ協定が4日に発効する。だが、世界の気温上昇を2℃以内とする協定の目標は、各国が約束した温暖化対策をすべて実施しても達成できず、2.9~3.4℃上昇になることが国連報告で分かった。目標達成には、2030年の温室効果ガス(GHG)排出量の約4分の1分の追加削減が必要という。

 

 国連環境計画(UNEP)の年次排出量ギャップレポート(Annual Emissions Gap report)が明らかにした。パリ協定が目標とする2030年の世界全体のGHG排出量は、協定で約束した各国の削減目標だと、2℃抑制に必要な排出量を12~14ギガトン上回るという。

 

 レポートによると、パリ協定に基づくと2030年の世界全体のGHG排出量は54~56ギガトンになる。ところが、産業革命前からの世界の気温上昇を2℃以内に抑制するには、42ギガトンに抑えねばならない。したがって、12~14ギガトンが「排出ギャップ」となり、追加削減が必要となる。

 

 日本のGHG排出量は2014年度で13億6400万㌧(約1.3ギガトン)なので、日本の約10倍分の追加削減が必要になる計算だ。2℃上昇以内に抑制できると、温暖化の進行によって引き起こされる暴風雨の激化や海面上昇、干害の拡大などを減少できると推計されている。逆に、2℃目標が達成できないとなると、こうした気候変動が激化することを意味する。

 

 UNEP事務局長のErik Solheim氏は「われわれは正しい方向に向かって動いている。パリ協定は気候変動を緩和するだろうし、最近のHFCs削減でのモントリオール議定書での合意も効果が期待できる。しかし、気候変動の激化を避けるためにはそれらだけでは十分ではない」と指摘している。

 

 同氏は、7日からモロッコのマラケシュで開く国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)の重要性に触れ、「われわれがCOP22の場で追加的な行動を進めないと、避けられるはずの人類の悲劇に直面することになる。飢餓と、貧困、病苦、紛争を抱えた気候難民の増大につながるだろう」と警告している。

 

 実際に、2015年は観測史上、過去最高の暑い年となったほか、今年もさらに記録更新を続けており、年間でも記録更新の可能性が濃厚だ。GHGの排出量も年間を通じて400ppmを突破するレベルに上昇している。

 

  一方で、国連レポートは、企業や都市、市民らの非政府セクターによるGHG削減技術の進展、市場化への期待、エネルギー効率化の加速、さらに国連の持続可能な開発目標(SDGs)との連動などによって、GHGの追加削減は達成可能との見通しも示している。

 

 非政府セクターによる排出削減能力は、農業や輸送部門などを中心に、2030年までに数ギガトンの潜在力があると推計している。またエネルギー効率化への投資は、2015年には2210億㌦規模に膨らんでおり、今後もより大きなGHG削減可能性を秘めているとしている。

 

http://unep.org/newscentre/Default.aspx?DocumentID=27088&ArticleID=36295&l=en