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パリ協定の各国削減目標(INDCs) 「2℃目標」を満たす国は、5か国だけ。日本は最低ランク。環境NGOの「Climate Action Tracker(CAT)」が各国を格付け(RIEF)

2016-11-08 23:30:10

CAT1キャプチャ

 

 パリ協定の発効で、焦点は各国が約束した国別削減目標(INDCs)の実行に移ってきた。環境NGOの「Climate Action Tracker(CAT」)は、各国の温暖化への寄与度と、INDCsとをもとに、各国を4段階に格付けし、公開した。日本は、最下位の「不適当」の烙印を押された。

 

 CATは、これまでIPCC(国連気候変動政府間パネル)で報告された40以上の報告書と追加分析を元に、「公平な削減努力の共有化」のための方法論を開発した。パリ協定は今後の世界の気温上昇を2度未満に抑制することで合意している。

 

 その合意を公平に実現するには、衡平性、歴史的責任、能力、公平性の観点が必要、としている。こうした観点から、本来その国が対応すべき削減レベルと、INDCsでの約束との乖離を 2020年、2025年、2030年の3時点において、4段階で格付けした。

 

 格付けは、2℃目標より野心的な削減目標を提示している場合は、Role Model(模範)として濃い緑で表記、2℃達成を厳格に守る目標の場合、Sufficient(十分)として黄緑、2℃ギリギリの目標の場合Medium(中位)として黄色に、2℃以下で消極的な目標の場合Inadequate(不適当)として、赤の警告カラーとした。

 

 また、IPCCのこれまでの報告等を基に、温暖化に対する歴史的な責任(Responsibility)や、その国の削減能力(Capability)、一人当たり排出量(Equality)などの7つのカテゴリーを加味して、各国の対応力を相対評価できるようにもした。

 

 その結果、最上位のRole Modelに格付けされた国はゼロ。Sufficientには、エチオピア、今回のCOP22の開催国のモロッコ、ブータン、コスタリカ、ガンビアの5カ国が選ばれた。

 

 ついでMedium(中位)には、ブラジル、チリ、欧州連合(EU)、インド、インドネシア、カザフスタン、メキシコ、ノルウェー、フィリピン、スイス、米国、ペルーの12カ国+地域。最下位のInadequate(不適当)には、日本のほか、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、シンガポール、南アフリカ、カナダなど14カ国が並んだ。

 

 日本については、2030年までに26%(2013年比、90年比で18%)削減のINDC目標では、もしすべての国が日本と同じ削減レベルだとした場合、今世紀末には地球の気温は2℃を上回り、3~4℃にまで上昇する可能性が高いとしている。つまり、パリ協定の公約としては不十分というわけだ。

 

CAT2キャプチャ

 

 さらに、現在の政策ではCO2吸収源のLULUCF(土地利用、土地利用変化及び林業部門)を除くと、実際の削減量は、2030年には90年比で4~11%の削減しか見込めないとしている。そして日本の目標削減の手法に“問題”があると名指している。

 

 それは、日本はINDCの基準年の排出量ではLULUCFをカウントしていないのに、目標年の削減量では含めるという恣意的な扱いをしているという点だ。もし、LULUCFのクレジットを基準年にカウントした場合、2030年の削減目標は13年比で23%減に下がり、90年比で15%減にしかならない、という。

 

 CATの計算では、日本が2℃目標に貢献するため、Medium(中位)のランクで評価される場合は、2030年の排出量は936MtCO2eで、90年比では24%の削減を目標とすべきとなる。さらにSufficiant(十分)になるには、排出量は137MtCO2eまで下がり、90年比で89%減を目標にしなければならないという。

 

 また日本のエネルギー政策について、現行の政策は、日本が低炭素社会に移行するのに必要な政策とはマッチしていないと、指摘した。むしろ、石炭火力発電所を増設しようとしており、再生可能エネルギーなどの低炭素部門の比率は、東京電力福島第一原発事故前の37.5%から、2030年になっても44%へ、5,5%ポイント増えるだけ、と指摘している。

 

 それも経済産業省が想定するように、原発発電比率が総発電力の20~22%を占めるまで回復した場合であり、実際にはそれはあり得ないケースだ、と指摘している。再生可能エネルギーのシェアは2010年の9.7%(大規模ダムを含む)から、2015年には14.6%に増えている。これは固定価格買い取り制度(FIT)導入の影響だ。

 

 ただ、経済産業省は「ソーラーバブル」を解消しようと、今年、FIT制度を改正したため、再エネ事業を大規模に展開するモメンタムを維持するのが難しくなっていると指摘、日本の再エネ政策の機能不全についても、評価引き下げの要因にあげている。

 

 日本以外では、同じく最下位のInadequateにランクされた韓国の評判が悪い。 Inadequateクラスでも「最悪」の評価となった。というのは、韓国は今年、「Green Growth Act」を改正し、パリ協定に沿った削減目標を定めたが、その目標値は、それ以前の法律で定めていた2020年の目標値を30年にそのまま数値を変えずに先送りしただけ。このため、国民一人当たりの排出量は増加を続け、2035年には米国を追い抜くとみられている。

 

CATのRatings

Inadequate If all governments put forward inadequate positions warming likely to exceed 3–4°C.
Medium Not consistent with limiting warming below 2°C as it would require many other countries to make a comparably greater effort and much deeper reductions.
Sufficient Fully consistent with below 2°C limit.
Role Model More than consistent with below 2°C limit.

  http://climateactiontracker.org/countries.html