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富士通研究所 人工光合成技術開発で 酸素の発生効率を100倍高める薄膜形成プロセス技術開発に成功(RIEF)

2016-11-11 20:27:42

fujituuキャプチャ

 

 富士通研究所は、人工光合成技術の開発で、従来の技術よりも100倍も酸素の発生効率を引き上げる新しい薄膜形成プロセス技術を開発したと発表した。この技術を使うと、人工光合成による貯蔵可能な生成エネルギー量を増大させることが可能になるという。

 

写真は、高い電子電動特性を持つ薄膜形成プロセス技術)

 

 人工光合成技術は、地球温暖化問題や、エネルギー問題の解決に資する次世代の基盤技術として開発が進められている。温暖化問題を解決するには、CO2を排出する化石燃料に頼らない貯蔵可能なクリーンエネルギーの開発が必要だ。人工光合成は太陽光と水とCO2を使って、酸素、水素、有機物などの貯蔵可能なエネルギーを人工的に生成することを目指している。

 

 今回の富士通研究所の技術は、太陽光等を使って酸素等を生成する効率を高めることに資する。水素や有機物など貯蔵可能なエネルギーを人工的に生成するには、太陽光のエネルギーを用い、光励起(ひかりれいき)材料から反応電子を効率よく取り出し、加えて電極において、効率的に水やCO2と化学反応させる必要になる。

 

 これまでの技術では、太陽光と水が反応する明反応の電極に、半導体材料や比較的大きい粒子状の光励起材料を密度の低い構造で固めた材料を使ってきた。しかしこれだと、太陽光(可視光波長)の中で利用できる波長の範囲が狭く、化学反応に十分な電流量を取り出すことが難しいという課題に直面していた。

 

 そこで、富士通研究所は利用可能な光の量を増やすため、光励起材料の形成プロセス改良に取り組んだ。光励起材料の原料粉末を薄い板状に破砕しながら、基板上に積層させる薄膜形成プロセス技術を開発した。原料粉末を、成膜後に原子レベルのひずみを持つ結晶構造に組成にすることで、太陽光の中で利用可能な光の量は2倍以上に広がり、さらに、材料と水との反応表面積を50倍以上に拡大した。

 

 形成された薄膜は、電子伝達特性に優れた緻密な構造となり、太陽光で励起された電子を、効率的に電極に伝えやすくなる。水と光の相互反応も大幅に促進できるようになったという。これにより、電子および酸素の発生効率を100倍以上に向上できることを確認した。

 

 今回の開発で、人工光合成の効率化に一歩近づいたといえる。同社では今後、光励起材料とプロセス技術のさらなる改良を進め、明反応の電極の特性向上を図るとともに、暗反応部(CO2還元反応)、全体システムの技術開発についても取り組み、人工光合成技術の実用化に向けてを目指す方針という。

 

http://pr.fujitsu.com/jp/news/2016/11/7-1.html