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トランプ次期米政権 2期8年続くと、温暖化対策の後退で、温室効果ガス排出量はクリントン氏の場合の想定より16%増、34億㌧増加へ。米調査機関が推計(RIEF)

2016-11-12 22:39:56

Luxキャプチャ

 

   トランプ次期大統領の登場で、米国の温室効果ガス排出量が増大する可能性が指摘されている。米調査機関の試算では、同氏が2期8年の就任を務めた場合、オバマ政権の政策を受け継ぐとみられたクリントン氏の場合に比べて、温室効果ガス排出量は16%増の34億㌧が増加するという。

 

 推計を行ったのは、米国の市場調査会社のLux Research。同社がレポートをまとめたのは大統領本選の直前だが、基本的に両候補が公約したエネルギー・温暖化政策の実行性を精査したものとなっている。

 

 選挙戦を通じてクリントン氏は、オバマ大統領が提唱した2030年までに温室効果ガスを30%削減する目標継承を主張してきた。2015年7月には、「任期中に5億枚の太陽光パネルを米国内に設置する」と宣言した。

 

 これに対してトランプ氏は、今年5月のエネルギー・ビジョンで、再生可能エネルギー事業の優遇策に否定的な姿勢を示し、シェールガスや石炭など化石燃料の生産を増加させる考えを示した。さらに、オバマ氏が石炭火力発電を実質的に抑制するために打ち出したクリーンパワープラン(CPP)の否定と、パリ協定からの離脱を宣言した。

 

 Lux ResearchのアナリストのYuan-Sheng氏は「われわれは独立したアナリストであり、どちらかに与するものではない。データと分析は明らかにクリントン氏とトランプ氏の政策は違った方向にあることは間違いない」と指摘している。

 

 

 ただ、Luxは、トランプ氏が石炭復興を強調した点については、同じく持論のシェールガス開発に関する規制の撤廃が、ガス価格の下落につながり、石炭は引き続き天然ガスよりも後位のエネルギー源の域を出ない、と指摘している。その分、温室効果ガスの排出量の増加ペースは抑えられることになる。

 

 再生可能エネルギー事業は、すでに米国市場で急成長している。クリントン氏は、これをさらに電力事業分野から商用、住宅用の発電へのシフトを目指した。トランプ氏はそうしたスタンスではないが、すでに市場では電力事業者の発電レベルを超えて、新たなエネルギー蓄電や新たなエネルギーマネジメントシステムのDERMS(Distributed Energy Resource anagement Systems)が広がっていると指摘。ビジネスとしての再エネ市場の広がりをトランプ氏も無視できないとの評価をしている。

 

 

 トランプ氏は、新たな化石燃料開発としてオバマ政権がストップをかけてきた北極海での海底掘削事業を承認する考えを示した。Luxはこの点も、実際の北極海開発はコスト高と複雑な要素が絡み合っており、ビジネスベースに乗りにくいとみている。

 

 つまり、トランプ氏の温暖化・エネルギー関連の主張のすべてが温暖化ガスの上昇に直結するわけではないという視点だ。そうした調整を踏まえて、Luxはトランプ氏が2期8年の政権運営を続けた場合、2024年までの温室効果ガス排出量は、オバマ政権の政策を継承したクリントン政権の場合より、16%、34億㌧増えると試算した。

 

 パリ協定の規定上、批准国は同協定から4年間、離脱できない。ただ、協定で米国が約束した削減目標を、トランプ氏が事実上、棚上げし、国内の温暖化対策を実施しない可能性は十分にあり得る。16%増、34億㌧の増加見通しは、そうしたケースを想定している。

 

 この増加推計分は、オバマ政権が8年間で削減した分に近い排出量を、それ以前のブッシュ政権時代に戻すほどのボリュームとなる。

 

 

http://www.luxresearchinc.com/news-and-events/press-releases/read/trump-presidency-could-mean-34-billion-tons-more-us-carbon