HOME9.中国&アジア |世界CO2排出量、2014年以降、3年間横ばい。363億㌧。中国の石炭火力規制が効果。ただ、パリ協定の目標達成には不十分。毎年0.9%減を2030年まで継続が必要。国際研究チームが公表(RIEF) |

世界CO2排出量、2014年以降、3年間横ばい。363億㌧。中国の石炭火力規制が効果。ただ、パリ協定の目標達成には不十分。毎年0.9%減を2030年まで継続が必要。国際研究チームが公表(RIEF)

2016-11-14 18:46:32

GHG1キャプチャ

 

 国際的な気候変動研究機関であるGlobal Carbon Projectは「2016年Global Carbon Budget」を公表した。それによると、化石燃料の燃焼による世界の二酸化炭素(CO2)排出量は2015年が363億㌧で、16年も0.2%増の見込み。3年間はほぼ横ばいになる。世界経済の成長率が3%を超える中で、排出量の伸びが1%以内のとどまるのは、中国の石炭火力抑制による排出削減効果が大きいという。

 

 化石燃料からのCO2排出量は2013年までの10年間で年平均2.3%の伸びを示してきた。それが14年には0.7%増にとどまり、その後、ほぼ横ばいで推移していることになる。

 

 報告を取りまとめた英East Anglia大学のTyndall CentreのCorinne Le Quéré教授は「経済成長が強い中で3年間ほぼCO2排出量が横ばいになったことは予想外だった。このことは温暖化対策が効果を上げることを意味している。ただ、その対策は十分ではない。CO2排出量が伸びないだけでなく、減少に向かわせなければならない」と指摘している。

 

 最大のCO2排出国である中国の2015年の排出量は104億㌧で、排出量シェアは世界全体の29%を占める。ただ、伸び率は前年比0.7%減と2年連続で減少した。中国は5%以上の経済成長を10年以上続けているが、16年も0.5%程度の減少になる見込み。

 

 GHG2キャプチャ

 

 国別では米国が54億㌧で、前年比2.6%減と下がった。オバマ政権による石炭火力使用規制の効果の一端が表れた形だ。世界の排出量シェアは15%。16年も1.7%の減少が見込まれている。ただ、トランプ政権になると、来年は増加に転じる懸念もある。

 

 景気低迷で減少傾向が続いていた欧州連合(EU:28カ国ベース)は35億㌧で1.4%増に転換した。排出量シェアは10%で世界第三の排出量となる。インドは23億㌧で5.2%増と、全体の伸びが鈍化する中で、目立って増えている。インドの世界全体に占める排出量シェアは6.3%。

 

 日本の15年の排出量は12億4000万㌧で、前年比2.2%減。排出量シェアは3.4%だった。

 

 CO2排出量の横ばい傾向がみられた一方で、大気中のCO2量は400ppmを超え、過去最高となった。化石燃料からの排出量が横ばいとなるなかで、大気中のCO2量が増えている主な理由は、CO2吸収源である陸地と海洋の機能低下が大きいとみられる。

 

 

GHG4キャプチャ

 

 陸地の場合、熱帯雨林の森林伐採に歯止めがかかっていないことと、海洋ではエルニーニョ現象の長期化で、海洋の温度が上昇、CO2吸収力が低下し続けたことが影響したとみられる。

 

 化石燃料からのCO2排出量が横ばい傾向にあるとはいえ、 地球温暖化防止の新たな国際枠組みであるパリ協定が目標とする世界の気温上昇を産業革命前から2℃未満に抑制することを実現するには、排出量が横ばいでは不十分で、2030年までに年間0.9%の減少が必要だと指摘している。

http://www.globalcarbonproject.org/carbonbudget/16/files/UK_UEA_GCPBudget2016.pdf

 

会員専用のE-learningや動画ニュースが見放題!!

会員登録
お問い合わせ

RIEF Interview

サステナブル ファイナンス 大賞

イベント・予定

2024年1月24日(水)・第21回RIEFオンライン勉強会(通算46回...
2024年1月17日(水)第9回サステナブルファイナンス大賞表彰...
2023年10月31日(火): 第20回RIEFオンライン勉強会(通算45...
2023年8月1日(火): 第19回RIEFオンライン勉強会(通算44...
2023年4月27日(木):第18回RIEFオンライン勉強会(通算43回...

Most Read

Recommend

Most Read
営業時間・情報
米証券取引委員会(SEC)。気候情報開示ルール公表。温室効果...
財務省の移行国債「クライメート・トランジション国債(CTB)...
「『ESG』の言葉を使うのはやめよう」。反ESGの高まりを受け...
「米国史上、2人目の『返り咲き大統領』か?『Xデー』は2025...
米ニューヨーク証券取引所(NYSE)。自然資本の価値を保全す...
2023年の「サステナブルファイナンス・ベストニュース」はTNF...
国際資産運用機関イニシアティブ(IIHC)。有機フッ素化合物...
国連支援の「責任投資原則(PRI)」。日本のGX政策には「必要...
COP28「勝者」はロシア。天然ガス想定の「移行燃料」確保を合...
カナダ政府。石油・ガス企業を対象として排出量取引制度(キ...
「ネットゼロ資産保有機関連合(NZAOA)」。脱炭素の移行政策...
中国の風力発電メーカー、相次ぎ世界最大の1基16MWの風力発電...
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)。気候・サステナビ...
三井不動産。グループ生物多様性方針策定。東京・神宮外苑の...
国際資本市場協会(ICMA)。気候トランジションファイナンス...

E-learning

環境金融E-Learning:基礎コース

提言・ガイダンス等

"Guidance on Adaptation Finance(final version)”.Proposi...
環境金融研究機構(RIEF)。「適応ファイナンス・ガイダンス...

出版・資料室


環境金融ブログ


Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.