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経産省、東電の福島原発賠償・廃炉費用で新たな推計。従来より倍増の20兆円超に膨張。東電救済を最優先し、新電力や国民への負担転嫁を目指す(各紙)

2016-11-27 11:36:38

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 各紙の報道によると、経済産業省は、東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償や廃炉費用の合計が20兆円を超えるとの推計をまとめた。同省はこれまで、費用額を11兆円としてきたが、倍増する。同省はこれらを送電費用や電力料金に上乗せして、再生可能エネルギー電力を使う新電力企業や消費者などに大半を負担させる考えで、強い反発が予想される。

 

 日本経済新聞が報じた。それによると、経産省は、東電が福島第一原発事故で引き起こした健康被害や住宅・商業地などへの賠償額を8兆円(従来推計は5.4兆円)、除染費用4兆~5兆円(同2.5兆円)、汚染廃棄物の中間貯蔵施設の整備に1.1兆円(同)、廃炉費用「数兆円」上振れ(1.1兆円)と上方修正、合計20兆円を上回るとしている。

 

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 費用が大幅な増大するのは、前回の見積もり時(2013年末)よりも賠償対象件数が増加しているほか、除染作業の費用が増大、また廃炉費用も原子炉内部で溶け落ちた核燃料(デブリ)の作業の困難さが予想以上で、「数兆円」と見積もりもできない状況にあることなどがわかったためとしている。

 

 東電の事故対応の甘さに加えて、経産省の事故処理推計の甘さも加わった形だ。特に廃炉の最大課題であるデブリの取り出しは、2020年前半に予定しているが、「本当に取り出せるのか」という疑問は消えていない。廃炉費用はさらに膨らむ可能性がある。

 

 これらの膨大な費用に対して、東電が確保のめどをつけたのは2兆円だという。政府はこれまで、東電への資金支援として、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が政府が発行した交付国債を受けて、東電に無利子で貸し付ける仕組みをとっている。当初5兆円だった国債の発行枠は13年度に9兆円に広げたが、経産省はこれをさらに拡大する必要があるとして、財務省と協議するとしている。

 

 東電が借り入れた資金については、現在は、当事者の東電のほか、他の電力大手が「共同責任」の形で一緒に返済している。だが、借入額が増大することから、電力自由化で新たに参入した新電力各社にも負担を求めるとしている。

 

 しかし、特定の企業が引き起こした損害分を、当該企業以外の同業他社に負担させるというケースは、市場経済の基本原則に反するのは間違いない。また、事故後に電力市場に参入した企業にまで過去債務を共同負担させるのは、他国にも例がない。電力自由化政策とは真逆の政策だ。

 

 本来は、経営できないほどの負担を負った企業は市場から退出させるべきである。それを事故とは無関係な企業、さらには再生可能エネルギー電力にまで負担させ、結局は電力料金の引き上げで国民負担にさせるのは、市場経済否定であり、統制経済の手法である。政府の本来の役割を超えており、最低でも国会に新たな法案を提出し、その正否を国民に問う必要があるだろう。

 

 日経の報道によると、経産省は新たな推計を東電の経営改革や資金確保策を話し合う同省の有識者会議の委員らに伝えたという。新たな推計についても、国会への報告が必要だ。

http://www.meti.go.jp/