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南米ボリビア、「干がい」の深刻化で非常事態宣言。温暖化の進展で水を供給する氷河が消えていく(RIEF)

2016-11-30 00:21:16

Boliviaキャプチャ

  南米のボリビア政府は、温暖化の進行による氷河の減少で、過去25年間でもっともひどい干ばつに直面しているとして、国家非常事態宣言を出した。

 

 ボリビアは世界で最も高地に首都がある国として知られる。その首都、ラパスと、隣接する第二の都市エルアルトはともに、必要とする水資源をアンデス山脈の氷河の氷解水に頼っている。

 

 しかし、地球温暖化の影響でアンデスの氷河も急速し、氷河からの氷解水を貯めるために築かれた3つのダムはいずれも、流入水が枯渇したため、干からびているという。

 

 このため、両都市とも水利用の計画断水が導入され、多くの市民が必要な水を確保できない状態が続いているという。生活用水の水不足に直面して、市当局に抗議をする市民の数も増え、市当局は武装警官の配備を行っている。

 

 Briiviaャプチャ

 

    同国は日本と季節が逆で、これから水利用の多い夏に向かう。このため、事態はこれからさらに深刻さを増す見通し。政府は各地で、緊急に非常用井戸の掘削が進めている。水不足の影響を少なくするため、学校は夏休み前に2週間の前倒し休校になるとみられている。

 

 モラレス大統領は、水道会社のトップが危機的状況を大統領に早期に報告しなかったとして、首にした。しかし、早期の報告があったとしても、原因は温暖化の進展の影響だけに防ぎようがなかったともいえる。

 

 同地域の年間平均気温は、1976年から2006年の間に平均0.5℃上昇したという。 またラパスなどの2都市の水資源元となるTuni-Condoriri氷河は、1983年~2006年の間に、39%減少している。氷河の消失は年間0.24㎢分という。

 

 エルアルトの上部に聳える Chacaltaya山の氷河は、かつては世界でもっとも高い場所にあるスキーリゾートとして有名だったが、現在は、雪が完全に消えてしまったという。

 

 パリ協定の目指す産業革命前からの世界の気温上昇が2℃未満に抑制できないと、同国の小さな氷河はほとんど消え、他の氷河も大きく縮小するとみられている。つまり、水資源不足はこれからさらに深刻化するということだ。

 

 特に、都市化が進行するエルアルトでは被害は甚大だ。同市は地方から流入してきた住民が、都市周辺にスプロール状で生活しており、都市人口数は100万人を超えている。水不足の進行で、山間部の小村落から都市に移動する人が増え、同市の人口は2001年から12年の間に30%以上増加している。このままでいくと、2050年までに倍増の200万人に膨れ上がる見通しという。

 

 水資源の供給不足の加速と、都市人口増による需要増の両面で、水不足はますます深刻度を増している。都市の水利用だけではない。氷河の水は、農業用にも、水力発電のダム用にも不可欠となっているからだ。

 

 すでに2009年の時点で、エルアルトの水需要は供給を上回っている。その後、気候変動の進展で、水資源の供給は次第に減少、需給バランスは崩れたままで、悪化を辿っている。