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チェルノブイリ原発 鋼鉄シェルター完成。老朽化した石棺を覆う。溶融した核燃料の取り出し作業は2023年以降(各紙)

2016-11-30 11:59:32

chelonoキャプチャ

 

 各紙の報道によると、1986年に爆発事故を起こして放射能被害を引き越したウクライナ(旧ソ連)のチェルノブイリ原発4号機を覆う鋼鉄製シェルターが29日完成、事故原発を覆う形で設置された。事故後に設置したコンクリート製の「石棺」は老朽化が激しく、放射能漏れなどの危険が高まったことから、新型シェルターを建設していた。

 

 29日には、現地で作業の完了式典が開かれ、ウクライナのポロシェンコ大統領や欧州復興開発銀行(EBRD)の幹部らが出席した(写真)。建設資金拠出に協力した日本からも角茂樹・駐ウクライナ大使らが参加した。

 

 現在の石棺は、事故半年後に急造されたため、コンクリートの亀裂などが生じ、劣化が著しいとされていた。このため、4年前から、石棺全体を覆う鋼鉄製のシェルターの建設工事が続けられていた。この日で、シェルターで石棺全体を覆う作業が完了した。

 

 式典でポロシェンコ大統領は、放射能漏れの危険にさらされながらシェルターの建設作業に従事した労働者に感謝の意を表明した。「事故から30年後、われわれは4号機から100mの現地点に安全に立っている。この歴史的なシェルターはようやく完成した」と評価した。

 

 チェルノブイリ原発事故は1986年4月26日の夜に発生した。約50人が爆発事故で死亡、その後、漏洩、拡散した放射能の被害で、約4000人が早期死亡したと推計されている。現在もなお、数千人の人々が、健康被害で苦しんでいる。事故現場から20マイル(32km)以内は、今も立ち入り禁止区域となっている。

 

 EBRDによると、新シェルターは幅257m、高さ108mで、重さは3万6000㌧。地上建造物としては世界最大規模で耐用年数は100年。

 

 シェルターの総建設費は15億ユーロ(約1800億円)。ウクライナ自身の財政能力が十分ないことと、事故が旧ソ連時代に起きたことから、EBRDはじめ欧州連合(EU)の各国、日本、米国、ロシアなど40カ国以上が負担した。

 

 ただ、初の巨大工事であったことや、建設費用の分担等を巡る調整などもあって、作業は大幅に遅れて工費も膨らんだ。

 

EBRD総裁のSuma Chakrabarti氏は「古い石棺はわれわれの眼前から消えた。しかし、われわれは決して事故による被害者を忘れることができない。事故の被害者への責任を負っている」と述べた。

 

 またEBRDのVince Novak原子力安全局長は「シェルターの完成で、事故以来の石棺崩壊リスクや、放射能漏れ等のリスクは減った。しかし内部には溶けた核燃料がそのまま残っている。石棺は耐水機能が十分でないので、放射能が地下水等に漏れ出すリスクは残っている」と、警戒を怠らない姿勢を示した。

 

 そのうえで、同氏は「このシェルター建設が最初で最後の大工事であることを、心の底から願っている」と付け加えた。

 

 今後、鋼鉄シェルターの密閉作業を始め、来年11月にその作業を完工した後、石棺内の溶融した核燃料の取り出し作業に入る予定。取り出しは2023年までの予定だが、核燃料がどのような状態になっているのかが不明なため、作業は難航しそうだ。

 

 東電福島第一原発の場合も、1~3号機の核燃料が溶融しているとみられる。チェルノブイリの場合、事故は4号機だけだったが、福島は3機も同時に事故を起こしており、燃料取り出し作業が可能かどうかも、現時点では不明とされる。