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WTOでの環境保護製品の貿易自由化協議(EGA) 年内合意見送り。約300の対象製品をめぐって調整つかず。米トランプ次期政権の「動き」もつかめず(RIEF)も

2016-12-05 11:24:45

WTOキャプチャ

 

  世界貿易機関(WTO)はジュネーブで、日米欧や中国、韓国など18カ国の代表が集まって、環境保護に役立つ製品の貿易自由化協議(EGA)を行なった。太陽光パネルや省エネのLEDなどの環境関連製品の輸入関税を撤廃する新協定の合意を目指したが、まとまらず、来年1月以降に交渉を再開する。

 

 EGA(Environmental Goods Agreement)にはWTO加盟の46カ国が参加している。地球温暖化や大気汚染の防止に貢献する製品の関税を撤廃し、グローバルに普及を促進するのが目的。協定交渉は、2014年に始まった。

 

 関税撤廃の対象となる製品の候補としては、太陽光パネルや風力発電設備などの再生可能エネルギー発電に関連する機器や、LED電球などの省エネ製品、大気、水質、土壌等の汚染改善製品、有害廃棄物処理、騒音減退、環境の質向上のモニタリング用製品等、全体で約300品目が対象となっている。

 

 特に途上国での温暖化対策や環境公害問題等に対応するため、効果的な機器類の貿易を促進することを目指している。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」や、11月に発効した温暖化対策のパリ協定などを受けて、具体的な環境対策の効果を高めるための環境保全製品を安価で取引できるようにする基本的な目標では一致している。

 

 ただ、関税撤廃の対象となる品目に何を含めるかという実務的な点で各国の利害調整が十分に進まなかったという。特に、中国が多くの品目を対象から除外するよう求め、これに対して、欧州連合(EU)が反発、特に中国が要求した自転車の追加に反対の姿勢を変えず、物別れとなった。

 

WTO2キャプチャ

 

 日本の代表は、温暖化対策の進展に役立つ燃料電池などを対象に加えるよう要求した。これも、競争力のある日本の製品への警戒から、反発する国もあり、双方の主張の隔たりを埋められなかった。当初は、パリ協定を踏まえて年内の政治合意を掲げていた。しかし、こうした細部の対立がまだ多いことから、年内合意は断念し、来年1月以降に交渉を再開する。

 

 交渉が進まなかった背景には、トランプ次期米大統領が就任後に環境問題でどのような方針をとるかが不明、という要素も大きかったとみられる。トランプ氏は、大統領選挙中はパリ協定からの離脱等を主張、温暖化問題にも懐疑的な姿勢を示していた。

 

 選挙勝利後は、トーンダウンしているが、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明するなど保護主義的な通商政策も掲げており、EGA交渉にも消極的な姿勢をとる可能性が指摘されている。また、米国内の環境政策でも、オバマ大統領の環境政策を支えてきた米環境保護庁(EPA)の権限を縮小するため、温暖化懐疑論者のミーロン・エベル氏を政権移行チームに入れる等の対応をしており、米国の環境政策が大きく変わる可能性も指摘されている。

 

 WTO事務局長のロベルト・アゼベド氏は「参加国があらゆる柔軟性をもって、協定の結論を得るように取り組むことを期待している」と述べている。

https://www.wto.org/english/news_e/news16_e/ega_04dec16_e.htm