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トランプ次期米大統領 米環境保護庁長官に温暖化懐疑論者のプルイット氏指名。オバマ政権の石炭火力規制のCPP政策の見直しなど、環境政策大転換の可能性(RIEF)

2016-12-08 12:02:58

Pruittキャプチャ

 

 トランプ次期米大統領は、温暖化対策等を担当する環境保護庁(EPA)の長官に、オクラホマ州の司法長官のスコット・プルイット(Scott Pruitt)氏を選んだ。同氏はオバマ大統領が推進してきた石炭火力発電所規制に反対して法廷闘争をとってきた中心人物。米国の温暖化政策が大きく転換する可能性が出てきた。

 

 (写真は、トランプタワーに入るプルイット氏:ニューヨークタイムズ紙から)

 トランプ氏は大統領選挙期間中、温暖化対策の国際合意であるパリ協定について「大統領に就任したら離脱する」と発言していた。ただ、選挙戦の勝利後は、「離脱」には言及せず、慎重な言い回しに修正し、温暖化対策の抜本変更は重視していないとみられていた。

 

 しかし、今回のプルイット氏の指名は、これまでのオバマ政権の温暖化政策を全面的に否定する意味を持つとみられている。プリット氏は、オバマ政権が推進してきたクリーンパワープロジェクト(CPP)に反対して訴訟を起こしている各州の一つのオクラホマ州の司法長官であり、これまでも温暖化問題については懐疑論の立場を鮮明にしてきた人物でとして知られる。

 

 今年5月には、「温暖化問題が人類の活動で起きているかどうかについては、科学者の間でも依然、議論が分かれている。もっと議論を深めるべきだ」と指摘、CPPについても「連邦議会での審議を得ておらず、一つの法案も提出されていない。国民の代表がチェックできていない」と強く批判する見解を公表している。

 

 また同氏は、石炭や石油などのエネルギー業界との結びつきが深く、多額の献金を受けていることでも知られている。

 

 実際、CPPは連邦法ではなく、EPAのCO2規制に基づき、各州が州法改正で石炭火力発電所の操業規制を実施する仕組みである。これに反対する29の州が訴訟を起こしており、現在は、最高裁が判断を留保している。新たなEPA長官がCPPの根幹を変更すれば、規制に積極的な州の石炭火力規制も、崩れる可能性がある。

 

 米環境団体等は、プルイット氏の指名のニュースに、早速、反対行動を呼びかける動きが出ている。NexGen Climateは、プルイット氏のEPA長官指名を拒絶するよう、米議員への呼びかけ署名活動を始めた。