HOME13 原発 |経産省の福島廃炉・賠償費用推計、従来の倍増の21.5兆円に大幅修正。新電力に2400億円負担強制。電力自由化より「東電救済」を優先(各紙) |

経産省の福島廃炉・賠償費用推計、従来の倍増の21.5兆円に大幅修正。新電力に2400億円負担強制。電力自由化より「東電救済」を優先(各紙)

2016-12-09 14:25:09

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 経済産業省は9日、東京電力福島第一原発事故の処理費が、21兆5000億円と、これまで国民に説明してきた11兆円から倍増するとの試算を公表した。廃炉・汚染水対策費は2兆円から8兆円に大幅増となるほか、賠償費用の一部を、電力自由化で参入した新電力会社に約2400億円の負担を求める。新電力への負担は電気料金に転嫁され、国民負担となる。

 

 経産省はこれまで、東電の福島原発事故関連の費用を、賠償に5.4兆円、除染に2.5兆円、廃炉に2兆円など、総額11兆円と国民に説明していた。しかし、事故被害の大きさから廃炉の見通しが立たないことや、汚染地の除染等が国の想定通りには進んでいない。そこで、廃炉費用を8兆円と大花に増額するほか、賠償額は7.9兆円、除染費用も4兆円に修正した。中間貯蔵施設費用も1.1兆円から1.6兆円に増やした。

 

 これらの費用を賄うため、国は東電の負担を一時的に国が立て替える認可法人「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に9兆円の無利子融資枠を設け、資金援助してきた。費用試算の倍増を受けて、国はこの無利子融資枠も14兆円へと5割アップする。

 

 国の計画では、東電は融資を受けた資金を、最終的には国民から徴収する電気料金を通じて回収する。電力自由化で、東電よりも安い価格で電気を供給する新電力が市場に参入しているが、今回、経済産業省が、福島原発の事故費用を、新電力にも負担させる方針を示したのは、直接の費用分担だけでなく、東電が負担分を回収しやすいように、新電力の電気料金の引き下げを抑制させる狙いもあるとみられる。

 

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  これまでは、東電の賠償費用を関西電力など他の既存電力大手も分担してきた。既存電力からも、東電の個社の費用を分担することに一部から異論が出たが、地域寡占の電力業界の相互連携として、分担している。しかし、今回の費用倍増に対して、既存の大手電力の反発もさらに強まることから、既存電力の負担を増やすだけでなく、新電力にも賠償費用7.9兆円のうち2400億円ほどの負担を求めるとした。

 

 新電力が負担を求められた2400億円分を、40年かけて支払うとした場合、新電力と契約する標準家庭の電気代に月平均18円上乗せされる計算だという。

 

 しかし電力市場への新規参入業者に、他の企業(東電)の費用を負担させるという政策措置は、電力自由化の趣旨に反することは明らか。経産省には、国のエネルギー政策を担う能力が欠けている疑念を、内外の市場関係者に引き起こす。負担を強いられる新電力各社が、訴訟を提起する可能性もある。

 

 除染費用は国が機構を通じて持つ東電株の売却益を充てる従来の枠組みを維持する。だが、除染費用の増額で、必要な売却益も増えるため、東電の企業価値の向上が課題になるが、電力事業そのものが、エネルギー効率化の進展で市場のパイが伸びておらず、東電が収益を高められるかは不透明だ。

 

 追加費用の負担割合は、東電1社が負担する廃炉費用を含めると、21.5兆円の費用総額のうち東電の負担割合は7割超。既存大手電力が2割弱、新電力の負担は1%程度という。新電力はこれらの追加費用は、東電や大手電力が持つ送電線の使用料に上乗せし、電気料金として広く利用者から集めることになる。

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