HOME11.CSR |温暖化対策で石油・石炭等の化石燃料企業への投資資金引き揚げ(Divestment)の宣言、世界で5兆2000億㌦(約600兆円)に達する。昨年9月比で倍増。米コンサル調べ(RIEF) |

温暖化対策で石油・石炭等の化石燃料企業への投資資金引き揚げ(Divestment)の宣言、世界で5兆2000億㌦(約600兆円)に達する。昨年9月比で倍増。米コンサル調べ(RIEF)

2016-12-13 16:03:46

divestmentキャプチャ

 

  地球温暖化の進行を阻止するため、石炭等の化石燃料関連企業への投資資金を引き揚げるDivestment宣言が、グローバルベースで5兆2000億㌦(約600兆円)に達したことがわかった。前年9月に比べて倍増となった。

 

 米国のインパクトインベストメント・コンサルタントのアラベラ・アドバイザーズがまとめた。報告書によると、世界76カ国で688の機関投資家、5万8399人の個人投資家がDivestment宣言をしたとしている。昨年の調査では、機関投資家は400、個人投資家は2000人だったことから急拡大している。個人投資家の増加が目立っている。

 

 Divestment運動は5年前に米国の大学で始まった。しかし、現在、引き揚げ宣言額の半分以上が米国以外で起きており、世界的に広がっているといえる。投資資金の引き揚げ対象は、NPOのカーボン・トラッカーなどのクライテリアでは、グローバルベースでの化石燃料関連企業の上位200社としてきたが、今回の報告では投資対象が多様化していることを踏まえ、それ以外の化石燃料関連企業への投資も含めた。

 

 Divestmentを宣言した新たな機関投資家のうち、75%は大学、慈善団体などで占められ、年金基金は12%にとどまっている。しかし、これらの機関投資家の資産規模は4兆6000億㌦と、宣言した機関の大半を占める。

 

 divestment2キャプチャ

 

 報告書は、年金、保険などの機関投資家は、加入者・契約者から預かった資金を適正に運用するフィデシャリーデューティー(受託者責任)を負っており、それを踏まえた投資判断の軸に、気候変動への責任を意識し始めていると指摘している。気候変動リスクをフィデシャリー・デューテォーとしてとらえる必要性は、BlackRockやMoody’s、Mercer、Fitchなどの市場関係機関からも提起されている。

 

 また、化石燃料関連投資の情報開示を求める動きも、広がり始めている。国別では、フランス、スウェーデン、それに米カリフォルニア州が気候リスク情報の開示を公開している。欧州連合(EU)も年金基金に対して気候変動関連リスクの評価や、資源の使途、環境・社会リスク、規制変更リスク等の開示を求める指令を出した。

 

  英バークレイズ銀行の試算によると、パリ協定の2℃目標を達成するためには、既存の化石燃料資源を凍結しなければならないことから、世界の石油産業は22兆㌦以上の収入を喪失するほか、石炭産業は5兆8000億㌦、ガス産業は5兆5000億ドルの得べかりし収入を失うことになるという。

 

 機関投資家等はDievstment宣言をした資金を、新たにクリーンエネルギー等の分野へ振り向けている。国際エネルギー機関(IEA)の推計によると、パリ協定で国際合意した世界の気温上昇を産業革命前から2℃未満に抑えるには、2050年までに、世界全体で36兆㌦の新たな投資が必要という。

 

2015年のクリーンエネルギーへの新規投資は3290億㌦となっている。Divestment宣言をした機関投資家,個人投資家全体のクリーンエネルギー投資資産は、1兆3000億㌦に達している。