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世界の石炭需要、2021年までにピークアウトの公算。IEAの中期見通し。中国の需要減退が主因。トランプ次期大統領の「化石燃料回帰」政策も効き目なし(?)(RIEF)

2016-12-13 21:59:34

COALキャプチャ

 

 グローバルな石炭需要が今後5年以内に、ピークを打つ「ピーク・コール」が近いとの観測を国際エネルギー機関(IEA)が報告した。石炭需要が世界最大の中国での消費が低下していくほか、米国でも再生可能エネルギーに経済性が高まり、石炭需要は伸びないという。トランプ次期米大統領が示す「化石燃料回帰」政策も、グローバルな需給と経済合理性には勝てないとみられる。

 

 IEAはこのほど、「中期石炭市場レポート」を公表、その中で、世界の発電に占める石炭の比率は、現状(2014年)の41%から、2021年までに36%へと5ポイント低下する予測を示した。これは、石炭の最大消費国である中国で、石炭消費がピークアウトする「ピーク・コール」が実現する見通しのためだ。

 

 中国政府は地球温暖化対策と、大気汚染対策の両面から、石炭等の化石燃料発電を再生可能エネルギーや原発等のCO2排出量の少ない発電に切り替えている。2014年の石炭需要量は28億9600万㌧で、2021年までに28億1600万㌧と微減する見通しだ。

 

 それでも中国が世界最大の石炭消費国であることには変わりないが、中国のエネルギー構造が確実に化石燃料依存から構造的なシフトを続けることは間違いない、とIEAはみている。世界全体の石炭需要は昨年の54億㌧から、2021年までに56億3600万㌧と、微増の横ばいペースとなる。

 

 この間の年平均伸び率は0.6%に鈍化する。過去10年間の平均伸び率が2.5%だったのと比べると、明らかに「石炭の時代」はピークアウトしようとしていることがわかる。ただ、IEAのエネルギー市場・安全局のKeisuke Sadamori氏は「石炭時代の終わりというのは早すぎる」と指摘する。

 

 同氏によると「石炭需要は経済成長が続き、人口増加も著しいアジア諸国にシフトしている。アジアでは経済の成長を確実にする安価なエネルギー源として石炭への需要は高い」と分析する。特に、インドは今後2021年にかけて、年率5%の成長率で石炭需要が伸びる最大の需要国になるという。

 

 石炭の市場価格は、ここ数年、低下を続けてきたが、今年は、中国での生産減少、アジア太平洋地域と欧州での強い需要増の要因によって、価格が急上昇している。IEAは市場価格は来年は下落し、その後、2021年までほぼ横ばいで推移するとみている。

 

 というのは、中国の石炭離れが引き続き続くことと、需要の高いインドやアジアでも、今後、パリ協定に基づく国内の温暖化対策が実施に移されるにつれ、需要の伸びは鈍化する傾向になるとみられているためだ。トランプ氏が、化石燃料重視政策に転じたとしても、電力の石炭需要はシェールガスとの競合もあり、高まらないとみている。米欧の石炭需要は2021年までに、米国が年4億7500万㌧、欧州が3億3700万㌧へ低下するとみられている。

 

https://www.iea.org/newsroom/news/2016/december/medium-term-coal-market-report-2016.html