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中国、インドなど新興・途上国を中心に、太陽光発電がコスト低下で「もっとも安い電源」になる国が増加。BNEF調査で明らかに(RIEF)

2016-12-28 01:09:36

ichigoキャプチャ

 

  グローバルな再生可能エネルギー発電市場が大きな変化を来している。太陽光パネルの価格低下で、途上国の太陽光発電価格は、発電源の中で、もっとも低価格になったところが増えている。Bloomberg New Energy Finance(BNEF)の調査で確認された。

 

 BNEFによると、中国やインドを含む新興国・途上国58カ国では、2016年を通じて、太陽光発電の平均価格は1MW当たり165万㌦となり、初めて風力発電の価格(同166万㌦)を下回った。調査対象国にはブラジルなども含まれる。これらの国々にとって再生可能エネルギー発電が新規発電の投資先として、着実に魅力が高まっていることを示す。

 

 BNEFのアナリストのEthan Zindler氏は「太陽光発電は5年前の存在がゼロに近い状態から、今や急増している。主に中国での拡大が大きい」と指摘している。太陽光発電の普及に伴って発電コストも急低下し、価格と開発の好循環が生まれている。

 

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 中国は昨年、太陽光発電事業に1030億㌦(約12兆円)を投資した。これは米国(441億㌦)、日本(362億㌦)、英国(222億㌦)を合計した規模よりも多い。発電事業の拡大に伴い、太陽光パネル等の発電設備の入札価格も低下を続けている。

 

 中国だけではない。インドでは今年の1月時点ではMWh当たりの太陽発電電力の供給契約は64㌦(7488円)だった。これが8月には29.10㌦(3404円)へと半額以下に下がった。

 

 BNEFでは、太陽光発電には温室効果ガスを削減するメリット(またはカーボンクレジット)もあり、これらを考慮すると、太陽光発電の価格が途上国にとって魅力的なレベルに達している、と説明する。BNEFのMichael Liebreich会長は「再生可能エネルギーは化石燃料電力より安く売れる時代に明確に入った」と述べている。

 

 再エネのうち太陽光に人気が集中していることにはいくつかの理由がある。設備費用が継続的に低下していることが最大の理由だが、さらには、テスラの家庭用充電器事業のように、新たなビジネスモデルの開発と連動していること、各国のクリーンエネルギー開発促進策が継続し、各国で競い合う状況も生まれていることなども影響しているとみられる。

 

 ただ、太陽光をはじめとする再エネの場合、世界全体でみると価格変動がある点と、太陽光はすべての地域で価格が最も安いわけではない点にも注意が必要だ。日照が多く利用できる地域での太陽光は有利性が高まっているが、電力の選択・契約ができる政策的な仕組みが導入されているかどうか、政府による補助金などの政策手段の有無も影響する。

 

 こうした制約条件はあるものの、新たに電力インフラの整備を強化する需要の多い途上国にとって、再エネは新規発電事業に占める最大の分野になりつつある。同時に、先進国を含めた世界全体でも、新規電源としての再エネの評価は高まっているとしている。

 

 先進国市場でも再エネ発電のウエイトの増大は顕著だ。たとえば、英国のスコットランドでは、今年の特定の日曜日に、地域内で必要とされる電力のすべてを風力発電だけでまかなった日が記録され、またポルトガルでは、4日連続して再エネ電力だけでまかなっている。ただ、日本では、4月に小売り電力自由化を実施しながら、新規発電事業者の多くが、石炭火力発電に頼る構造であり、再エネ電力の相対的な価格の高さが「特殊」と映る。

 

 また、化石燃料の使用が一夜にして消え去るわけでもない。しかし、再エネ発電の価格低下、効率的な技術開発の促進、政府の再エネ支援策の3要因があいまって、世界のエネルギー需給のランドスケープ(景観)を一変させる可能性が現実的になっている。2017年は、「電力・エネルギーの景色」が変わる年になるかもしれない。

 

https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-12-15/world-energy-hits-a-turning-point-solar-that-s-cheaper-than-wind