HOME10.電力・エネルギー |国際エネルギー機関(IEA) 2021年までの中期再エネ市場見通しを15%上方修正。各国の再エネ政策の強化とコストダウンを反映。21年には発電量の3割近く(28%)が再エネに(RIEF) |

国際エネルギー機関(IEA) 2021年までの中期再エネ市場見通しを15%上方修正。各国の再エネ政策の強化とコストダウンを反映。21年には発電量の3割近く(28%)が再エネに(RIEF)

2017-01-06 15:55:57

IEA1キャプチャ

 

 国際エネルギー機関(IEA)は、2021年までの中期再生可能エネルギー市場報告を修正し、世界全体の再エネ事業の普及が従来予測よりも15%増となる、との報告をまとめた。再エネ普及の上方修正はパリ協定の発効を受けて、各国で温暖化対策の強い政策支援が進むためとしている。

 

 すでに世界全体でみると、新規導入の発電設備のうち、太陽光や風力などを合わせた再エネ発電規模は、石炭火力発電を上回って、世界最大の発電源となっている。IEAではこれまで2015年の中期市場推計を立てていたが、再エネ発電推進の勢いが広がっていることから、今回の上方修正に踏み切った。

 

 特に、市場規模の大きい中国、米国、インド、メキシコでの政策主導の再エネ普及が見込まれている。このうち、米国ではトランプ次期大統領の登場で、温暖化対策への連邦政府の支援策が転換される可能性もある。だが、カリフォルニアやニューヨーク州など州政府の温暖化対策は引き続き推進姿勢が強いほか、太陽光発電などのコストダウンが広がっており、民間ベースの再エネビジネスが増大していることを評価している。

 

 再エネ発電のコスト低下は今後も続く。IEAの中期市場見通し期間でも、太陽光発電コスト25%の低下、陸上の風力は15%低下が見込まれる。2016年に世界全体で新規導入された再エネ設備の発電量は前年比15%増の153 GWという過去最大水準に拡大している。153GWのうち4割強の66GWが風力発電、3割強が太陽光発電。単純に計算すると、一日平均50万枚のソーラーパネルが稼動したことになる。

 

 国別では、中国が再エネ最大市場の座を維持した。世界の新規導入風力発電の半分が中国で産声をあげ、再エネ全体でも4割は中国市場で稼動している。中国の場合、一時間平均で2基の風力発電が羽を回し始める計算になる。

 

 IEAの事務総長のFatih Birol氏は「われわれはまさに、世界の発電市場が再エネによって転換していくプロセスの目撃者になっている。特に新興国市場で再エネ発電が発電事業の中心に置き換えられている」と指摘している。

 

 IEAはこうした「発電転換」が急速に広がる要因として、競争の激化、効果的な政策支援、技術革新の進展等をあげている。また、パリ協定発効による気候変動の緩和策の必要性は強力な再エネ支援のパワーではあるが、IEAは「それだけではない」と分析している。中国やインドのように、大気汚染の悪化の深刻化や、エネルギー安全保障のためにエネルギー供給源を多様化しようという政策なども、特にアジアの新興国の間では要因となっている、という。

 

 今後5年間を展望すると、再エネ発電はもっとも成長率の高い発電分野であり続け、全発電量に占める比率も、2015年の23%から2021年には28%へと5%ポイントアップするとみられる。中期的な電力市場の新規増加分の60%以上は再エネ発電で占められ、石炭火力発電との差はジリジリと縮まる。

 

 2021年時点の再エネ発電量は7600TWhで、現在の米国と欧州連合(EU)を合わせた総発電量とほぼ等しいレベルになるという。ただ、IEAは今回の上方修正が主要国の再エネ支援策の強化を理由としていることから、こうした政策支援が変化するリスクについても指摘している。また現在の活況なグリーン投資が反転するリスクもある。またグリーンボンド市場は急拡大しているが、グローバルベースで見ると、まだグリーンファイナンスの規模は十分ではない。とりわけ途上国市場でのグリーンファイナンスの確保は課題になっている。

 

 また発電分野では再エネ電力が急ピッチで普及しているものの、暖房等の熱源や、自動車等の輸送面では、エネルギー転換のテンポは緩やかで、さらなる政策支援が必要、と強調している。

 

 再エネ発電の広がりも地域的な差異もある。アジア地域では再エネ市場は順調に拡大しており、特に中国だけで世界の新規再エネ発電の4割を占める勢いとなっている。しかし、その中国の再エネ発電でも、国内のエネルギー需要の伸びが大きいことから、新規電力需要の半分をカバーするに過ぎない。一方、米欧や日本などの先進国では、新規の再エネ発電は、国内のエネルギー需要の伸び鈍化もあって、中期的にみると比率をあげていくとみられる。

 

https://www.iea.org/newsroom/news/2016/october/medium-term-renewable-energy-market-report-2016.html