HOME |オバマ大統領 退任前に、学術誌『Science』に寄稿。「クリーンエネルギーの不可逆的な機運」。トランプ次期政権の反温暖化政策への傾斜を牽制(RIEF) |

オバマ大統領 退任前に、学術誌『Science』に寄稿。「クリーンエネルギーの不可逆的な機運」。トランプ次期政権の反温暖化政策への傾斜を牽制(RIEF)

2017-01-11 14:37:18

obamaキャプチャ

 

 まもなく退任するオバマ米大統領が、科学誌「Science」に、クリーンエネルギー導入の重要性を分析した政策論文を掲載する。オバマ氏は地球温暖化対策に力を注いできたが、「温暖化問題に対する経済的、科学的確証は今後も続き、クリーンエネルギー市場の増大によって米国の経済的機会は拡大するだろう」と、政権が代わっても、温暖化対策の経済的重要性は増すことがあっても、減じられることはない、との姿勢を結論づけている。

 

 論文は「The Irreversible Momentum of Clean Energy(クリーンエネルギーの不可逆的な機運)」。と題した4ページの原稿。オバマ氏が単独の単独で、ホルドレン大統領補佐官(科学技術担当)らが執筆に協力したという。13日付で掲載される。オバマ氏はこれまでも、Harbard Law ReviewやJournal of the AMrican Medical Associationなどの学術誌に論文を掲載した経緯があるが、Science誌は初めて。

 

 オバマ氏は、クリーンエネルギーへの移行が「不可逆的」である理由として、4つの点を上げて論述している。1つは温暖化対策と経済成長のDe-coupling(分離)である。同氏は大統領に就任して以来の経済成長は10%以上増えたのに、エネルギー分野からのCO2排出量は9.5%減っているという実績を示し、「温暖化対策が経済成長を阻害するのではなく、むしろ効率性、生産性、革新技術を高めることを示している」と述べている。

 

 第二点も似ているが、「温暖化対策は、民間企業の経済活動の足かせにならない」という点だ。2015年の米国内のエネルギー消費量は、オバマ氏が就任した2008年より2.5%低下したが、経済成長は前述のように10%を超えている。またクリーンエネルギー、省エネ関連の雇用者数は220万人で、化石燃料生産や電力関連の110万人を上回っている。毎年50億㌦の化石燃料関連の補助金を続けるより、エネルギー効率化を進めるほうが、より多くの雇用をもたらし、経済成長につながる、としている。

 

 3点目は、発電分野での市場の力だ。電力分野では温室効果ガス排出量が石炭よりも少ない天然ガス発電が、2008年の21%から33%に増え、かつ発電コストも石炭より低下している。また再生可能エネルギー発電の価格低下も顕著で、風力はこの間に41%、屋根置き太陽光は54%、商業用の大規模太陽光発電では64%のコストダウンとなっていることを指摘。これらのコストダウンには税制面などでの政策支援が重要な役割を果たしたと強調している。

 

 最後が「グローバルな機運(Global Momentum)への言及だ。パリ協定にはすでに世界の温室効果ガス排出量の75%以上を占める110カ国以上が批准しており、気候変動対策は「不可逆的な機運」にあると評価を加えた。

 

 

http://science.sciencemag.org/content/early/2017/01/06/science.aam6284