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次世代の超臨界地熱発電、政府が東北・九州の5県を開発候補地に選定。2020年前後に試掘へ。成功すると現在の地熱発電量の倍以上の開発が可能に(各紙)

2017-01-20 16:37:56

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  各紙の報道によると、政府は、発電量が既存の地熱発電より大量に見込める「超臨界地熱発電」の開発候補地として、岩手などの東北3県と、大分など九州2県の合計5県を想定していることがわかった。超臨界地熱発電は、地下深部に存在する高温・高圧の「超臨界水」を地上に汲み上げ、その蒸気でタービンを回す方式。2017年度に着手する超臨界水の有効利用システムの検証後、2―3年後をめどに、候補地での試掘の検討に入る考えという。

 

 東北地方は岩手のほか、秋田、福島の各県。九州は大分と鹿児島の両県。今回、超臨界地熱発電の開発候補地に想定されている5県は、いずれも東北電力や九州電力が地熱発電所を稼動させている。いずれも地熱発電用のエネルギー源が豊富な県として知られている。

 

 日本は米国、インドネシアに次ぐ世界第3位の地熱資源量がある。政府は再生可能エネルギーの普及を促進しているが、エネルギー源の多様化を進めるため、二酸化炭素(CO2)を排出せず、かつベースロード電源として活用できる地熱の開発を重視している。その中でも、膨大なエネルギー量が期待できる超臨界地熱発電は、次世代の地熱発電として注目されている。

 

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   超臨界水は、古い山やカルデラの地下4km―5km(東北地方の場合)の深部にあるとされ、400―500℃の高温で高圧の水をいう。最新の研究では、超臨界水を含む岩「超臨界岩体」が存在する可能性が高いという。これらに含まれている超臨界水を地上にまで汲み上げて、その蒸気でタービンを回して発電する。

 

 ただ、世界的にも、超臨界地熱発電を成功させた国はまだない。超臨界水は強酸性とされ、掘削には高温、高圧、腐食に耐える材料の開発が必要。日本の技術力で開発のカベを突破できるかがカギとなる。

 

 日本の地熱発電所は現在、約50万kW分が稼働中。超臨界地熱発電が実現すれば、最大で数100万kW分を追加的に実現できる可能性があるという。このため、政府は2017年度予算案は、超臨界地熱発電の調査や地熱発電の導入拡大に対し22億円を計上している。技術的な課題などを検証後、実際に試掘する場合には候補地を5県のうちまず、1カ所に絞り込んで開発を進めることになるとみられる。

 

 これまで、内閣府のエネルギー・環境イノベーション戦略推進ワーキンググループ(柏木孝夫座長=東京工業大学特命教授)が暫定的に作成した資料では、超臨界地熱発電について「2050年頃に従来の地熱発電所の約5倍となる発電出力15kWの発電所建設」などの提言が盛り込まれている。