HOME11.CSR |インドネシアの大手製紙会社APRIL 森林保全の誓約守らず。「ステークホルダー諮問委員会」から、WWFとグリーンピースが離脱。APRIL製品の信頼性欠如に。同社の紙製品を使う日本企業のCSRも問われる事態に(RIEF) |

インドネシアの大手製紙会社APRIL 森林保全の誓約守らず。「ステークホルダー諮問委員会」から、WWFとグリーンピースが離脱。APRIL製品の信頼性欠如に。同社の紙製品を使う日本企業のCSRも問われる事態に(RIEF)

2017-01-20 17:22:58

April2キャプチャ

 

 環境NGOのWWFとグリーンピースは、インドネシアのロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループに属する大手製紙メーカー、エイプリル社(APRIL)の、「ステークホルダー諮問委員会」に参加してきたが、同委員会への参加を停止したと公表した。長年指摘されてきた同社のスマトラやボルネオなどでの植林地開発による自然林の破壊や、地域社会への悪影響が、依然解消されないうえ、同社が公表した「持続可能な森林管理のための誓約」が透明性を欠いたままであることなどが理由。同社の製品を扱う日本企業の対応も問われそうだ。

 

 APRILはインドネシアのスマトラ島を中心に自然の熱帯森を開発伐採し、紙製品用の植林地を拡大してきた。同社が生産したコピー用紙などの紙製品は、世界中に輸出され、日本でもホームセンターや小売店などで販売されている。

 

 APRILの植林開発は、1980年代から始まり、さらに同じ製紙メーカーのAPP社などによる開発とともに、同地域での自然林を大規模に開発した結果、スマトラトラやスマトラゾウ、オランウータンなどの貴重な野生生物の生息地が奪われ、生態系に大きな打撃を与えている。さらに、地域住民との社会紛争を高め、開発による泥炭湿地の消失は温室効果ガスの排出拡大につながっている。

 

APRIL1キャプチャ

 

 2013年には、自然環境や地域社会に配慮した森林管理のための世界的な森林認証制度で知られるFSC®(Forest Stewardship Council)®が、「アソシエーションポリシー」を適用し、APRILと関連企業に対して、関係を断絶することを発表した。その結果、APRIL関連企業は、一切のFSC認証の取得や普及等のためのライセンスを得られなくなった。

 

  FSCの「アソシエーションポリシー」は、企業やグループ単位で評価し、森林破壊や社会紛争などを引き起こした場合、事業者全体の認証を許可しない、あるいは取り消す仕組みになっている。このため、一部の森林区画や工場などでFSC認証を取得しても、企業やグループ全体の活動が環境や社会に影響を与えている場合は、取り消される。

 

 FSC認証がとれないと製品としての販売に支障をきたすことから、APRILは、2014年に「持続可能な森林管理方針(SFMP)」を発表し、サプライヤーの活動の監視、保護価値の高さを測るアセスメント(評価)の実施、所有する植林地と同等の面積の森林の回復・保全の約束などの誓約を公式に掲げた。

 

 April3キャプチャ

 

 その誓約の監視と遵守のため、「ステークホルダー諮問委員会」を設け、現地のWWFやグリーンピースのメンバーを委員に加えてる体制をとった。しかし、諮問委員会設置後も、スマトラ島やカリマンタン島などで、同社に原料を供給するサプライヤーが、保全対象であるはずの自然林の皆伐を継続しているなどの事態が続いた。

 

 APRILは、2015年に、NGOらの指摘を受けて、「SFMP」を改訂して「SFMP 2.0」を発表した。しかしそれでも、同社のサプライヤーによる自然林の皆伐活動は続き、SFMPは書面だけの約束で実効性を伴わないことが表面化していた。こうした事態を受けて、今回、WWFとグリーンピースは以下の理由をあげて、諮問委員会からの離脱を決めた。

 

1. APRIL社とロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループによる「持続可能な森林管理方針(SFMP2.0)」と「林業、木質繊維、紙パルプの持続可能性枠組み」の実施に関して進捗が見られないこと。

 

2.  泥炭湿地の保護・回復に向けた政府の新たな政策に対し、違反があったこと。

 

3. 透明性の欠如、及び「従来通り」の操業を隠蔽するためにエイプリル社が誤解を招くような情報を提供してきたこと。

 

http://www.wwf.or.jp/activities/2017/01/1352618.html