カンボジアの森林伐採、14年間で144万ha。東京都の3分の2の面積の森林が消失。NASAの衛星写真の時系列分析で判明。ゴム植林地などに転用。CO2排出量も急増へ(RIEF)
2017-01-21 11:40:47
ブラジル・アマゾンやインドネシアなどの熱帯雨林伐採問題とともに、急速に森林伐採が進むカンボジア。米航空宇宙局(NASA)の衛星がとらえた画像から、過去14年間に年間14.4%のペースで伐採が進み、東京都の約3分の2の森林が消失したことがわかった。
NASAの公表によると、2001年から14年にかけて、年間14.4%のペースで森林伐採が進み、14年間の総伐採地域は144万ヘクタールに達した。豊かな熱帯雨林はゴム植林地に変貌、伐採された森林は材木として売り払われた。
カンボジアの伐採ペースは、他国を上回る勢いだ。2001年の森林の年間消失地域は2万8500㌶だったが、2010年には10倍近い23万8000㌶の消失となっている。森林消失の目立つ他の国では、シェラレオネが年率12.6%、マダガスカル8.3%、ウルグアイ8.1%、パラグアイ7.7%とされ、カンボジアは群を抜いた伐採ペースといえる。
以前にはカンボジアの森林は、タイ、ラオス、ベトナムに囲まれた豊かな森林で知られてきた。野生のトラの生息地をはじめ、多様な動植物の宝庫でもあった。しかし、現在、原生林のままで残っている森林はわずか3%だけという。インドシナトラは絶滅したとみられる。
消失した144万ヘクタールの森林のうち、38%は人の手の全くついていなかった原始林(IFL)だった。カンボジア国内で残る原始林は一カ所だけという状態だ。熱帯雨林の給食な消滅は、生態系や森林生活に依拠してきた住民たちに影響を与えただけではない。
森林が持っていた温室効果ガス(GHG)の吸収源としての機能も大量に失われた。Global Forest Watch Climateの調査では、14年間全体で5億3300万㌧に相当するCO2が森林から排出された形だ。これはカナダ一国の年間エネルギー消費から生じるCO2量とほぼ同じという。
NASAはこれほどの森林伐採が短期間に進んだ背景として、グローバルなゴム価格の上昇と、同国政府が木材会社や農業会社に、リースで土地を配分してきたことが大きな要因だと指摘している。NASAの衛星画像を時系列的に追うと、豊かな森林地帯が徐々にゴム植林地の増大につながっていることが映し出されている。
政府公認の森林伐採に加えて、カンボジアでは不正伐採も横行している。同国の森林生産の90%は不正伐採だという調査結果もあるほどだ。
ただ、最近になってカンボジア政府は、森林伐採で残された半月状地帯の森林保護を2016年に公式に始めている。同時に、新たな自然国立公園の指定も行われ始めた。保護団体はこれらの保護地に新たにトラを再導入する計画も検討し始めているという。
もっとも同国政府が残された森林を適正に管理できるかどうかという課題がある。また同国産のゴムや木材の消費地である先進国等の側にも、消費財の産地を適正に評価する体制の整備が求められるが、この点も依然、十分ではない。
http://earthobservatory.nasa.gov/IOTD/view.php?id=89413&src=eoa-iotd
https://news.mongabay.com/2017/01/nasa-releases-images-of-dramatic-cambodia-deforestation/