HOME |トランプ米政権、エネルギーの基本方針明示。前政権の石炭火力規制のクリーン・パワー・プラン(CPP)破棄を明言。国内シェールガス・石油の開発促進、石炭産業の再活性化を目指す。パリ協定に触れず(RIEF) |

トランプ米政権、エネルギーの基本方針明示。前政権の石炭火力規制のクリーン・パワー・プラン(CPP)破棄を明言。国内シェールガス・石油の開発促進、石炭産業の再活性化を目指す。パリ協定に触れず(RIEF)

2017-01-21 23:04:26

Trump1キャプチャ

 

  米大統領府(ホワイトハウス)は20日、ドナルド・トランプ大統領の就任を受けて、新たなエネルギー政策の基本方針を示した。その中で、オバマ大統領が推進した石炭火力発電を規制するクリーン・パワー・プラン(CPP)の廃止を明言、「米国第一主義のエネルギー政策」を推進すると宣言した。

 

 同方針では、エネルギーは米国民の生活と世界経済の安定の主要部分を形成すると位置づけている。そのうえで、①米国市民のエネルギーコストの低減②米国内のエネルギー資源の最大限の活用③外国の石油への依存からの開放、の3点を目標として掲げた。

 

 まず①の目標達成のため、「これまであまりにも長い間、エネルギー産業に課せられてきた不必要な規制を解き放つ」と宣言した。その不必要で有害な規制の代表として、CPPを名指ししたほか、クリーンウォーター法に基づく「 Waters of the U.S. rule」の規制緩和を課題にあげた。

 

 CPPは、州法によって、既設の石炭火力発電所からのCO2排出量を厳しく規制する内容。その成否を巡って最高裁判所に審理が持ち込まれている。「Waters rule」は、河川や湿地など自然環境の豊かな地域の保全を優先した規制。その分、経済・インフラ開発等のしづらくしているとの批判が産業界から出ている。

 

 これらの大気、水質の規制を緩和することで、米国労働者の賃金が今後7年間に3000億㌦以上増えると指摘している。規制緩和によって①のエネルギーコストが低減し、労働者の実質賃金上昇につながるという説明のようだ。

 

 ②の国内のエネルギー資源の活用という点では、シェールガス・シェール石油の開発によって、多くのアメリカ人が雇用を得、繁栄を獲得できるとしている。特に連邦政府の土地に眠るシェール石油や天然ガス資源量は推計50兆㌦規模に上ると指摘。

 

 これらの国有の資源を民間に売却することによる収入を元に、道路、学校、橋梁などの公共インフラ設備を再建する考えのようだ。エネルギー価格の低下によって、農業生産性もアップすると強調している。温暖化問題で世界的に批判の矢面に立つ石炭については、クリーンコール技術の開発に力を入れ、米石炭産業の再生を目指すとしている。

 

 ③の外国の輸入石油依存からの独立は、中東を軸とする石油輸出国機構(OPEC)によるエネルギー価格カルテルの影響力から脱することを目指す。 同時に中東諸国とは、反テロ戦略の一環としてポジティブなエネルギー協力関係を築くとしている。

 

 環境問題を無視しようとしているわけではない、とも指摘している。エネルギー政策は同時に、環境への責任あるスチュワードシップを伴って進めねばならない、と明記。クリーンな大気とクリーンな水を守り、さらに米国の自然地域と資源を保全することには、高い優先度を置く。さらに新大統領は環境保護庁(EPA)に、そうした大気と水質の保全に関する主要な役割を再認識させる、としている。

 

 最後に、トランプ大統領が掲げる「米国第一主義」に基づく将来の繁栄は、エネルギー政策に依拠するとしている。エネルギー政策の安定と自立性が、経済を活性化し、社会の安全性を増し、健康を保全することにつながるとしている。

 伝統的に共和党の環境政策は、自然は、神から人間に保全と利用を託されたもので、人間はそれを適正に管理・保全する役割を担うというスチュワードシップの考え方に立つ。今回のエネルギー政策の基本もこうした視点が色濃く出ている。

 

 ただ、トランプ氏は大統領選挙期間中はパリ協定からの離脱に言及したが、今回のエネルギー方針には、パリ協定の取り扱いや、温暖化対策全般については一切触れていない。政権内でまだ方針がまとまっていないのか、あるいは、パリ協定には積極的には触れず、当面、受け身の政策をとるのかもしれない。

 

https://www.whitehouse.gov/america-first-energy