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老朽原発の関電・高浜原発2号機で、稼働延長のための安全対策工事のクレーンのアームが倒壊。使用済燃料等の保管建物を直撃。(各紙)

2017-01-22 00:15:30

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 各紙の報道によると、福井県高浜町の関西電力高浜原発の構内で、20日午後9時50分ごろ、工事用の大型クレーンのアーム(全長約113m)が倒れ、同原発2号機の原子炉補助建屋と使用済み核燃料を保管する燃料取り扱い建屋を直撃した。アームは強風で倒れたという。関電は、周辺の放射線量に影響はないと説明している。

 

 クレーンの直撃を受けた2号機の建物は、使用済核燃料等を保管したプールが設けられていた。プールには影響はなかったとみられるが、2号機は1号機とともに40年を超える老朽原発。それを、昨年6月、原子力規制委員会が安全対策の補強を条件に20年の運転延長を決めた経緯がある。今回の事故は、その安全対策工事の一環で、安全対策工事が事故を起こすという笑えない事態となった。

 

 倒れたクレーンのアームは二つの建物にぶつかって、ぐにゃりと曲がった状態になっている。建物の屋上の壁の一部も変形した。燃料取り扱い建屋内には使用済核燃料保管用のプールがあり、259体の核燃料が保管されていた。内訳は、新しい核燃料が44体、使用済み核燃料が58体、燃料として使用し、再び原子炉に入れる予定の核燃料が157体。

 

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 関電によると、クレーンの衝撃で屋上の壁は変形したが、プールの天井からは落下物等はなかったとしている。ただ、原子力規制庁の検査官によるチェックでは、建物内の壁で一部パネルがずれているのを確認したという。

 

 福井地方気象台によると、20日夕方から21日未明にかけて、同地域には暴風警報が出ていた。関電によると、高浜原発構内に2か所ある風力計の測定では、事故当時、毎秒14mと15mを記録したという。強風には違いないが、台風などによる風力に比べると、それほどでもないといえる。

 

 今回のクレーンは、コンクリート製のドーム屋根を2号機の原子炉格納容器の上部に設置する準備工事のために持ち込まれていた。関電では昨年12月に大型クレーン4台を設置、2月からの本格工事に向けて準備作業を進めていた。

 

 クレーンは約270㌧で、転倒防止のため、アームの先端からワイヤで吊るした約5㌧の重りを接地させていた。風力42mでも倒れない想定だったという。しかし、実際は14~15m程度の風に持ちこたえられなかったことになる。

 

 原子力規制庁の検査官は21日、今回の事故で、安全上重要な設備には影響がないことを確認したとしている。今後、倒壊したクレーンを安全に撤去できるかなどを調べる。福井県も職員2人を派遣し、関電から状況の説明を受けた。

 

 老朽原発を無理に稼働延長させるための安全対策で、「ヒヤリ・ハット」の事故を引き起こしたことになり、原発稼働最優先の原子力規制委の姿勢が改めて問われそうだ。

http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2017/pdf/0121_1j_00.pdf