HOME10.電力・エネルギー |日本卸売り電力取引所(JEPX) 昨年中の市場取引量、過去最高の201億kW時。新電力参入で44%増。ただし、総電力需要のわずか2.5%。既存大手電力の電力販売の少なさが市場拡大を阻害(各紙) |

日本卸売り電力取引所(JEPX) 昨年中の市場取引量、過去最高の201億kW時。新電力参入で44%増。ただし、総電力需要のわずか2.5%。既存大手電力の電力販売の少なさが市場拡大を阻害(各紙)

2017-01-30 16:46:43

JEPXキャプチャ

 

  各紙の報道によると、日本卸電力取引所(JEPX)の2016年の取引量は前年比44%増の201億kW時と過去最高になった。16年4月に開始された小売り電力市場の全面自由化によって300社を超える新電力が参入し、市場での買い注文が増えたためだ。ただ、国内の電気全体のうち市場取引は2.5%程度で、日本の電力市場では、まだ市場が機能しているとはいえない。

 

 JEPXは2005年に開設した。市場の自由化で電力市場に参入した新電力会社の中には、再生可能エネルギー発電所を持つところもあるが、多くは、既存の電力会社や自家発電設備を持つ工場などと契約して電力を調達するケースが多い。JEPXはそうした新電力向けに、一定の条件を満たす会員企業になれば、市場を通じて電力を調達したり、販売したりする仕組みを提供している。

 

 特に昨年4月の小売市場の全面自由化で、新電力市場に参入した新電力がJEPXの買い手として登場した。その一方で、電力を販売するのは、主に既存の大手電力会社となるが、既存電力は余剰分しか販売しないため、市場に出回る電力量は少なく、価格変動も大きい。このため、買い手の新電力にとっては安定的な調達が容易ではない、という課題がある。

 

 JEPXでの取引量自体は10年前の2006年の13倍と増大した。しかし、電力の総需要実績(2015年度)の7970億kWHに比べると、微々たる水準にとどまっている。経済産業省は既存電力に対して一定量を市場に放出することを求めているが、昨年11月には東京電力の100%子会社の東京電力エナジーパートナー社が、JEPX市場で不当に高い価格で売り入札を行い、相場をつり上げていたことが発覚、電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告を受けるなど、既存電力の“市場破壊”の行動が横行している。http://rief-jp.org/ct4/65872

 

 「卸売市場」という名前はあるものの、既存の電力は製造(発電)から送配電(流通)、小売(販売)までを従来通りに一貫して提供しており、 JEPXを中心とした市場取引の構造とはほど遠いのが現状だ。市場を通じた安定的で、安価な電力供給を続けるには、既存電力の一貫供給体制を解体し、市場の需給で価格が決まる仕組みに切り替える必要がある。

 

 経済産業省にそうした政策運営を実行する能力がないのならば、電力・ガス取引監視等委員会の機能を強化して、政策機能も移管するのも選択肢の一つだ。

 

http://www.jepx.org/