HOME5. 政策関連 |東電福島第一原発の核燃料デブリ取り出し困難に。旧ソ連のチェルノブイリ原発同様の「石棺化」の可能性高まる(各紙) |

東電福島第一原発の核燃料デブリ取り出し困難に。旧ソ連のチェルノブイリ原発同様の「石棺化」の可能性高まる(各紙)

2017-02-04 01:46:50

fukushima2キャプチャ

 

  東京電力が福島第一原発2号機の格納容器内部の画像分析から、推定で最大毎時530シーベルトの放射線量を計測したことで、廃炉作業は極めて厳しい見通しになった。運転中の原発の圧力容器内と同レベルの強度で、事故時の菅直人元首相は「チェルノブイリ原発と同様、核燃料デブリを取り出せない可能性が高い」と懸念している。

 

 燃料デブリを取り出せないと、廃炉作業はできず、旧ソ連のチェルノブイリ原発と同様に「石棺化」する以外にない、との指摘もある。(写真は昨年11月に完成したチェルノブイリ原発の鋼鉄製ドーム)

 東電は今回、格納容器内に入れたカメラで内部を撮影した。その画像が放射線で乱れている様子から線量を分析した。毎時530シーベルトの線量は、原子炉を覆う圧力容器を支える台座の手前約2m付近の空間で計測した。それ以外の場所では、圧力容器下の空間入り口付近が同200シーベルト、格納容器の壁付近が同50シーベルト。これまでは、2号機内部で12年に線量計で計測した同73シーベルトが最高値だった。

 東京工業大の沢田哲生助教(原子核工学)によると、「強烈な値の放射線量は溶け落ちた核燃料デブリが近くにあることを示しており、飛び散った燃料に由来したものだろう」と推測している。

  東電は、線量計で直接測って得られた数値でないため、誤差も大きいと説明している。だが、今回の数値は、格納容器内で測定した過去最大の線量で、人が直接浴びればほぼ即死するレベルだ。菅氏は東電の説明として「運転中の原子炉の炉心である圧力容器内の放射線量が圧力容器の外で観測された」と指摘している。http://ameblo.jp/n-kan-blog/entry-12244169928.html?frm_src=favoritemail

 そうだとすると、廃炉作業は原子炉内でやるのと同じ条件になる。溶け落ちた核燃料デブリの取り出しは極めて困難で、原子炉内でも作動するロボットを開発しないと無理だ。仮に、そうしたロボットを開発できたとしても、それまでは2号機は、原子炉内と同様のレベルの放射線量が放出される状態が続くことになる。

 2号機だけではない。事故時、運転を停止していた4号機を除く、1,3号機も2号機と同様に核燃料デブリが圧力容器から漏れ出しているとみられる。万一、それらの放射性物質が大気中に放出されると、状況によっては二次汚染被害が福島県以外にも拡大する可能性もある。

  政府は、東京オリンピックに向けて「福島はアンダーコントロール」との印象を定着させようと、原発周辺地域への住民の帰還を進めている。だが、2号機以外の事故原子炉も含めて、放射線量が極めて高い不安定な状態が長期化する可能性は高まってきた。帰還を急がされる住民は将来の「二次災害リスク」に晒されるともいえる。

 

 チェルノブイリ原発は、1986年の原子炉爆発事故から30年以上経過しているが、核燃料デブリはいまだに取り出せていない。この間、急ごしらえのコンクリート製の石棺でカバーしてきたが、劣化が激しいことから、昨年末、放射能漏れを防ぐ巨大な鋼鉄製ドームで原発全体を覆う作業が完了した。実際に、デブリを取り出すのは2023年以降とされている。http://rief-jp.org/ct4/66065

チェルノブイリの石棺を覆う鋼鉄製ドーム(昨年11月完成)
チェルノブイリの石棺を覆う鋼鉄製ドーム(昨年11月完成)

 

 チェルノブイリの場合も、鋼鉄製ドームは完成したが、内部のデブリは永久に取り出せず、今の場所に残り続ける可能性が高い、とされている。楽観的な推定で、事故から35年後に作業に着手、廃炉完了は見通せず、というわけだ。そして福島第一も同様な展開になる可能性が高い。

  菅氏は、「福島第一原発の廃炉費用は東電が負担するとしても、東電だけに任せるのではなく、国民の安全を第一に国家プロジェクトとして長期的視点から取り組むべきだ」と、政府の対応の強化を求めている。