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米環境保護庁長官への「温暖化否定論者」のプルイット氏指名に、元EPA職員約450人が反対の署名と抗議行動展開。シカゴでは現役職員も反旗(RIEF)

2017-02-08 12:01:13

EPAキャプチャ

 

   ドナルド・トランプ大統領が環境保護庁(EPA)長官に指名した温暖化否定論者のスコット・プルイット氏の就任を、連邦議会が拒否するよう、約450人の元EPA職員たちが、週初めに議会に向けて署名を提出するなどの抗議活動を行った。

 

 EPAのシカゴ・オフィスの現職員らも同様の抗議行動をとっている。焦点となっているプルイット氏はオクラホマ州の司法長官として、オバマ前大統領が推進してきた石炭火力発電所規制のクリーン・パワー・プロジェクト(CPP)について違憲訴訟を提起するなど、反温暖化対策の立場を鮮明にしてきた。

 

 プルイット氏は、単にオバマ政権の政策への批判者にとどまっていない。地球温暖化の現象に対して疑問を投げかける人を懐疑派(Sceptics)というが、同氏はもっと明確な否定論者(denial)として名が通っている。こうした人物を環境保護を担当するEPAのトップに据えるトランプ人事は、温暖化政策を全否定するのと等しい。パリ協定からの離脱も時間の問題とみられる。

 

 EPA2キャプチャ

 

 EPAの役人には温暖化対策だけでなく、世界の環境政策をリードしてきたとの自負がある。今回の“異常人事”に対して、長年、環境行政を担当してきた元EPA職員たちが抗議の声をあげたわけだ。

 

 30年以上、同省で働いたBruce Buckheit氏は「我々は引退したので、あまり現役に影響を与えるようなことはしたくない。しかし、今回だけは別だね。大統領は憲法を守り、EPAが国民や消費者のために働けるようにするべきだ」と主張している。

 

 一方で、共和党議員の多くは、EPAが企業活動に対して不必要な規制をかけ過ぎている、として今回のプルイット氏の長官任命を歓迎している。20以上の保守系の環境団体等は、大統領を支持する声明を出している。

 

 プルイット氏は、これまでEPAに対する法的訴訟の中で、EPAの温暖化対策以外にも、石炭火力等からの水銀排出規制、スモッグ規制、さらに湿地保護規制などについて、行き過ぎた規制だとして反対の姿勢をとってきた。

 

 議会に提出された署名文は以下のように指摘している。「われわれは党派的な視点ではなく、多くは共和党、民主党両方の政府の下で環境行政に従事してきた」「すべてのEPA職員は現行法と最善の科学に基づいて公衆の利益のために行動する基本的な責任を負っている。プルイット氏のこれまでの言動をみると、米国の環境政策の長年にわたる基本をわかっているのか疑問だ」。

 

 またプルイット氏が、これまで長年にわたって石炭等の化石燃料業界と緊密な関係にあったことも指摘、特定産業の利害にコミットし過ぎている懸念も指摘している。その一方で、同氏が出身のオクラホマ州において、国民の健康や環境保護等でイニシアティブをとるような活動をしてきていない点も、記述している。

 

  またシカゴでは、EPAの現役職員を含む300人の人々が、市内のダウンタウンにあるEPAの地域本部から市内をデモ行進し、プルイット氏の指名に反対するアピールをした。

 

 ただ、米議会では上下院とも共和党が過半数を占めていることから、先週上院の委員会での議論では、民主党議員が全員退席して抗議の意思を示したものの、プルイット氏の指名は承認されている。現状では本会議での承認も覆らない情勢だ。

 

http://www.chicagotribune.com/news/local/breaking/ct-trump-epa-protest-chicago-20170206-story.html