HOME8.温暖化・気候変動 |全米の自動車メーカー18社のCEOが連名で、トランプ大統領にEPAの自動車燃費規制強化の見直しを要請。メキシコ等からの工場引き上げの見返り(?)(RIEF) |

全米の自動車メーカー18社のCEOが連名で、トランプ大統領にEPAの自動車燃費規制強化の見直しを要請。メキシコ等からの工場引き上げの見返り(?)(RIEF)

2017-02-13 17:55:50

UScarキャプチャ

 

   トヨタ自動車を含む全米市場の自動車メーカー18社の最高経営責任者(CEO)がトランプ米大統領に対し、オバマ前政権が強化した自動車の燃費基準を2025年型車まで変更しないとする米環境保護局(EPA)の決定を見直すよう要請した。CEOたちは、燃費基準をめぐるEPAの審査期間が政権交代前に、恣意的に短縮されたと主張している。

 

 共同書簡を作成したのは、米ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラCEO、フォード・モーターのマーク・フィールズCEO、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のセルジオ・マルキオンネCEOら。トヨタは北米トヨタのCEOが署名した。このほか、ホンダ、日産、VW、ヒュンダイなども名を連ねた。

 

 オバマ前政権は2011年、米国で販売する自動車の燃費を2025年までに平均で54.5MPG(1ガロン当たり走行マイル=約22km/㍑)へと、ほぼ倍に引き上げる燃費基準を示した。温暖化対策の必要性と、エコカー等への消費者のシフトもあり、当時の自動車メーカー各社も合意した。しかしその後、自動車メーカー側は、ガソリン価格の下落で燃費の良い車の需要が抑制されており、新たな基準の達成がより難しくなっていると主張していた。

 

 EPAは新規制によって、自動車のライフサイクルでの燃料効率が向上し、約1兆㌦超の経済効果があると指摘。その一方で、自動車メーカーの追加負担コストもかさむが、燃費改善効果の約5分の1の2000億㌦で済むと試算し、説得してきた。また温室効果ガスは対象自動車全体で60億トンの削減が可能としている。

 

 メーカー側の言い分によると、EPAは同規制の是非について、市場動向等を踏まえて、中間審査を行う予定としていた。「昨年秋頃まで、EPAは新政権誕生の前に中間評価が最終決定につながることはないだろうと約束していた」という。ところがEPAは、新政権誕生の1週間前に、温室効果ガス対策の必要性からこの燃費規制の変更は不要との判断を示したという。

 

 共同書簡では「当初は中間評価を18年4月の前に決める予定だったが、オバマ政権はその結論を1年以上前倒しし、規制の妥当性のチェックを阻んだ」と批判している。そこで、EPAの改革を旗印に掲げるトランプ大統領に、EPAの審査を当初のスケジュールに戻すよう求める要請を行ったわけだ。

 

 自動車業界は、トランプ政権の「アメリカファースト」政策の標的となって、メキシコでの自動車工場建設を断念したり、国内の工場増設などの対応を迫られている。こうしたコストアップ要因を引き受ける一方で、2000億㌦の追加コストを課す「オバマ規制」の見直し、あるいは先送りを大統領から獲得して、収益確保を目指す判断のようだ。

 

 「環境重視」のオバマ政権から、「ビジネス重視」のトランプ政権への移行が進んでいるだけに、EPAの規制は風前の灯といえる。

 

https://www.epa.gov/