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米環境保護庁長官に、温暖化懐疑論者のプルイット氏の就任決定。米上院承認。温暖化規制撤廃訴訟等の原告。現在も8件の反EPA訴訟を継続中。米温暖化政策の転換明確に(RIEF)

2017-02-19 10:14:58

Pruittキャプチャ

 

  米上院本会議は17日、トランプ政権が指名したオクラホマ州司法長官のスコット・プルイット氏を米環境保護庁(EPA)長官とすることを賛成多数で承認した。同氏は地球温暖化懐疑派として知られ、これまでEPAに対しCO2排出規制撤廃など14件の訴訟を起こしており、そのうち8件は訴訟が進行中。原告が「被告EPA」のトップに就く異例の事態になる。

 

 徹夜の審議は賛成52対反対46だった。同氏の就任に反対する野党の民主党は、同氏がオクラホマ州裁判所から、同州司法長官の立場で化石燃料業界等の関係を確認する書類やEメールの開示を命じされていることから、採決をその結果以降に延ばすことを求めた。

 

 これに対して、最終的に民主党議員のうち、石炭産業州のノースダコタ州とウェストバージニア州選出の2人が造反、共和党のメイン州選出の1議員がプルイット氏に「ノー」の投票をした。共和党造反議員のスーザン・コリンズ氏は「プルイット氏は州の司法長官としては有能だが、健康と環境を守るEPAの重要な使命と一致するか疑問」とした。またアリゾナ州の共和党議員は国際会議参加のため欠席した。

 

 プルイット氏はこれまで、オバマ前政権による石炭火力発電所のCO2排出を規制する「クリーン・パワー・プラン(CPP)」規制の導入撤廃を求める反対訴訟の原告になっているほか、シェールガス・油の開発でもEPAの水質汚染規制の緩和等を求めた訴訟を起こすなど、これまでに14の訴訟を起こしている。このうちCPP撤廃訴訟を含め8件が進行中。

 

 これまでの議会でのヒアリングで、プルイット氏はトランプ氏が大統領選挙中に「地球温暖化はhoax(デマ)だ」と指摘した点に合意するかと問われ、「私はデマだとは思わない。気候は変化しており、その変化に人類の活動の影響は幾分かはあるだろう。しかし、われわれが議論すべきなのは、その影響の程度と広がりだ」と述べている。

 議会ヒアリングで、プルイット氏はEPAに対する8件の現行の訴訟について、自らが長官に就任した場合にどうするのか、と問われた。自らが原告から退くかどうかについては明言を避け、「不適正にならないよう、EPAの倫理委員会と相談する」と述べるにとどまっている。

 プルイット氏のEPA長官就任は、米国の環境政策が大きな転換点を迎えたことを象徴する。オバマ前政権は温暖化対策をはじめ、国内の石油パイプライン計画、北極圏の海底資源開発政策などに、環境保護、住民配慮などの立場で待ったをかけてきた。

 

 トランプ氏は、こうした環境重視政策に対する産業界の不満を背後に受けて、明確なカジ取りの転換を目指している。エネルギー長官に指名したリック・ペリー前テキサス州知事も温暖化懐疑派。プルイット氏のEPA長官就任で、環境、エネルギーの両サイドから環境政策の修正を図るとみられる。

 

 こうした露骨なトランプ政権の見直し路線に対して、民主党のシェルドン・ホワイトハウス議員は「羊の群れの中にオオカミを入れるのと同じ」と強く批判している。EPAの職員からも強い懸念が出されている。EPAの科学者を含むOB職員約800人は議会に懸念の書簡を送付している。また一部の現役職員がプルイット氏就任反対の抗議集会に参加したりしている。

 

 ただ、プルイット氏のこれまでの石炭業界等とのEメール等が公開されると、同氏の今後のEPAの政策運営の自由度が幾分、束縛される可能性もある。