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「ふがいない民進党」――自民、民主の両元首相が、原発政策で電力労組に牛耳られる民進党の蓮舫執行部を批判(RIEF)

2017-02-21 01:19:36

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 民進党が来月12日に予定する党大会で「2030年原発ゼロ」を打ち出せるかどうかに、関心が集まっている。現在、同党は「2030年代原発ゼロ」を掲げるが、蓮舫執行部はこれを「2030年」に確定し、安倍政権の原発再稼働政策への対抗軸にする狙い。電力労組等の労働組合が反対する一方、自民、民主の元首相は「電力労組離れ」を求めるなど、蓮舫執行部は正念場を迎えている。

 

 民進党が「反原発」を改めて政策の柱に据えようとしているのは、原発関連企業の相次ぐ“行き詰まり”で、安倍政権への対抗軸になるとの見方が背景にある。「主要原発メーカー」の東芝は米原発事業の失敗で債務超過となり、「原発ユーザー」の東京電力は福島第一原発事故の影響で、実質国有化から脱する見通しは、ほぼ永遠にあり得なくなっている。

 

 経営不振に陥っているのは、日本の原発関連企業だけではない。フランスの原発メーカーのアレバは経営破たんし、国営電力のEDFの支援下で辛うじて息をついている。そのEDF自体が、原発のコストアップに悲鳴をあげている。「原発は安い」と喧伝してきた経済産業省の情報が「偽ニュース」とほぼ同じだったわけだ。

 

 就任以来、政策提案力不足を露呈し、支持率低迷が続く民進党の蓮舫執行部。だが、現行の原発政策が経済合理性を欠くことが鮮明化し、福島原発事故の収束もほぼ不可能な状況がはっきりする中で、「脱原発」の旗印を明確にすれば、原発再稼働促進の自民党との違いを打ち出せることは間違いない。そこで、「2030年代」という幅を持った従来の目標年限を、「2030年」に絞り込もうとしているわけだ。

 

連合・神津里季生会長
連合・神津里季生会長

 

 ところが、こうした対抗軸の明瞭化に対して、有力支持母体である連合を筆頭とする労働組合が立ちはだかっている。連合の神津里季生会長は先週16日の記者会見で、「民進党が現在掲げる『2030年代原発ゼロ』ですら、相当にハードルが高い」とし、「工程表の中身なしに、数字だけ『2030年』と前倒しする内容を(公約として)出そうとしているのであれば、大きなマイナスになる。政権を任せられる政党として国民の支持を集められるのだろうか」と牽制した。

 

 17日には原子力産業と密接な関係にある電力総連、基幹労組、電機連合の3労組が、民進党に対し、「2030年原発ゼロ」方針を再考するよう申し入れたという。

 

 労働組合の反発を受けて、先週開いた民進党のエネルギー環境会議では、脱原発政策の明瞭化に反対意見が相次いだという。60人ほどの国会議員が参加する中で、東電労組出身の参議院議員が、早急な脱原発に反対論を展開したほか、多くの反対論が原発関連企業の組合出身の議員から出た。

 

 電力労組が原発擁護に回るのは、原発事業の職場の確保を重視したものと理解される。だが、その職場が、東電のように廃炉もままならぬ極めて危険な状況が続き、東芝のように職場を守るどころか、原発事業の失敗で企業自体が存廃の瀬戸際に立たされている現実は、労組には見えないのだろうか。

 

 民進党議員にとって、労働組合は、選挙の有力票田であり、強力な支援母体だ。逆に、組合の不興を買うと、民主党が政権を手放した時のように、候補者は「逆選挙運動」を浴びて、落選させられるリスクがある。

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 こうした「労組に睨まれた民進党」の姿を、厳しく批判したのが、自民党の元首相の小泉純一郎氏だ。同氏は意見が割れる民進党を名指して、「ふがいないよ。野党第1党何してんだ。もう選挙勝たなくていいのか」と批判。組合についても、「電力関係は多くて50万票。その声を聞いてグラグラして決まらない。50万票欲しさに、500万以上ある一般国民の声を聞いてないのが今の民進党だ」と喝破した。

 

 小泉氏の叱咤に共鳴する形で、民進党(民主党)の元首相である菅直人氏は、「私もまったく同感。国民の安全を優先して考えれば、脱原発は急ぐことはあっても、遅らせる理由はないはず」と述べ、労働組合による執行部への露骨な圧力を批判した。

 

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 さらに、「60年代の公害問題でも公害を出している企業にかかわる労働組合は、公害解消の取り組みに消極的だった。そこで、公害に関係する企業や労働組合に関係の薄い市民運動が反公害で立ち上がった」と指摘、民進党が「組合の党」から「市民・国民の党」に転換する岐路にあるとの認識を示した。

 

 今、福島原発は、1~3号機の圧力容器から漏洩した核燃料デブリの処理がほぼ不可能であることが判明し、放射能拡散リスクが再び高まっている。「アンダーコントロール」どころか、「アンコントローラブル(制御不能)」な状況だ。そうした危険な現状を踏まえながら、目先の職場維持しか考えようとしない労働組合に遠慮して、民進党が立ち尽くすようだと、この国は、本当に「ふがいない」ことになる。

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