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欧州連合(EU)はパリ協定達成のために、2030年までに石炭火力発電全廃を。独気候NGOが提言。新規石炭火力計画が相次ぐ日本はどうする(?)(RIEF)

2017-02-24 00:07:29

EUcoal3キャプチャ

 

  欧州連合(EU)がパリ協定で合意した世界の気温上昇を2℃未満に抑える等の目標を達成するためには、2030年までに域内の石炭火力発電所を100%閉鎖する必要がある、との報告が公表された。ドイツの気候NGO、Climate Analytics(CA)がまとめたもので、特にEU全体の石炭火力の過半を保有するドイツ、ポーランドの2カ国の対応が焦点となる。

 

 CAの分析によると、パリ協定で合意した世界の気温上昇を産業革命前から2℃より十分に低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する目的を達成するためには、EUの2050年までのカーボンバジェット(CO2排出可能量)は6.5Gtと計算した。

 

 現在EU内にある石炭火力発電所は約300カ所で、発電基数は738基。これらが現行のまま発電を続けると、2050年までにバジェットを85%上回る。さらに新規計画中の火力がそのまま追加されると、排出量は倍増になってしまうという。

 

 このためCAは、2020年までに現行の火力の25%を閉鎖し、2025年までに閉鎖は72%に拡大、そして2030年までにはすべての石炭火力の「火」を消す必要があるとしている。石炭火力の全廃は、温暖化対策だけでなく、大気の質を改善し、人々の健康にも、エネルギー安全保障上にも、プラス効果が期待できる。

 

 EUcoal2キャプチャ

 

 EU内の石炭火力は、ドイツ、ポーランド、ブルガリア、ルーマニアなどに集中している。とりわけドイツとポーランドの2か国で、発電能力の51%、CO2排出量の54%と過半を占めている。英国、フランス、フィンランドなどは、今後10~15年で廃止の方針を打ち出しているが、逆に、ポーランドやギリシャは新規建設を計画している。

 

 CAは石炭火力の閉鎖の手順について、①規制アプローチ②市場アプローチ、の2つを提案している。①は政府規制によって、CO2排出量の多い火力から閉鎖していくというもの。②は発電効率の悪い火力から閉鎖する。どちらを優先するかは、各国の判断だが、いずれも2030年を目標とする。

 

 石炭火力閉鎖と並行する形で、再生可能エネルギー発電の普及を促進する必要がある。特に石炭火力閉鎖によって雇用喪失等、地域経済へ影響が生じる懸念があることから、石炭火力依存地域での再エネ事業の展開を求めている。

 

http://climateanalytics.org/hot-topics/eu-coal-phase-out.html