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米石油メジャー最大手のExxon Mobileの新CEO。パリ協定の順守を明言したうえで、国家レベルでのカーボン税の導入を評価(RIEF)

2017-02-26 00:48:16

Woods

 

 石油メジャー世界最大手の Exxon MobileのCEOの座を、トランプ政権の国務長官に就任したRex Tillerson 氏から受け継いだDarren Woods氏が、カーボン税の導入を支持し、関心を集めている。

 

  Woods氏の見解はExxon MobilのCEOとしての最初のブログで言及した。同氏は、世界人口増、経済成長によって、エネルギー需要が引き続き増えていくことを指摘。「エネルギー需要の増大は、二つの挑戦を創り出す。需要に応じたエネルギー供給を適正に行うことと、それに伴う気候変動リスクを制御することだ」として、気候変動対策の必要性を強調した。

 

 そのうえで、Exxonとして、パリ協定の発効を評価するとの姿勢を示した。同氏は、「世界はすでに、エネルギー供給とCO2排出量を削減する気候変動対策を両立させる強力な手段を持っている」として、天然ガスへの切り替え、低硫黄燃料、CCS(CO2回収貯留)技術、バイオ燃料などを例示した。

 

 加えて政策面での選択肢として、国家レベルでの税収中立型のカーボン税を提唱した。同税によって、経済に追加的な負荷をかけずに、エネルギー効率化を促進し、低炭素化社会への選択が進むとし、「経済全体に適用される一定のカーボン価格の採用は、CO2排出量を削減する『賢明なアプローチ(sensible approarch)』」と評価した。

 

 Woods氏は、エネルギー供給と気候変動対策に同時に挑戦しなければならない現在の状況を「世界最大の民間エネルギー会社として、非常にエキサイティングな時を迎えている。その責任と挑戦は重要だが、達成可能でもある」と自信にあふれた見解を示している。

 

 同氏が強調した税収中立型のカーボン税の導入は、代わりに課税対象となる企業の法人税減税などで、産業全体としては税負担を増やさないことを意味する。しかし、エネルギー効率化を進める企業やCO2排出量の少ない燃料への転換を選択する企業はカーボン税負担が軽くなり、法人税も軽減されるため、低炭素化企業が優遇される。

 

Woods2キャプチャ

 

 これに対して、改革の遅れる企業や産業はカーボン税負担が法人税等の減税よりも多くなる。このため、気候変動対応をしないままだと競争力が減退し、市場から退出を迫られることにもなる。

 

 カーボン税は、将来の追加的な低炭素エネルギーの開発を進める市場のインセンティブを提供する、とも語った。「カーボンに価格付け」することで、市場が低炭素エネルギー、燃料を選択する、との考えを強調した。前CEOのTillerson氏も、これまでも同様にカーボン税を支持する発言をしており、Woods氏は前任者のスタンスを踏襲した形だ。

 

 Exxonの会社としての主張のカギは、「税収中立(Revenue neutral)」という点にある。カーボン税の課税に見合う形で、法人税等を減税するものだ。 ただ、懸念もある。「カーボン税」というネーミングの響きの一方で、「税金さえ払えば、CO2排出量を減らさなくてもいい」という選択肢を選ぶことも可能になる。

 

 共和党内などでは、新税の導入の見返りとして、オバマ前政権が導入を目指した石炭火力発電所等へのCO2排出規制の緩和を抱き合わせにする意見もあるという。カーボンへの価格付け策としては、カーボン税のほか、排出権取引制度(C&T)があるが、C&Tと違ってカーボン税は必ずしも排出総量を抑制できるとは限らない点に注意が必要だ。

 

  カーボン税を評価するエネルギー企業はExxonだけではない。他の石油メジャーのBP、 StatOil、Royal Dutch Shellなども同様の姿勢を表明している。これらの企業はいずれも天然ガス開発への投資を強化している点でも共通する。

https://energyfactor.exxonmobil.com/perspectives/the-future-of-energy-opportunities-and-challenges/