HOME8.温暖化・気候変動 |プルイット米環境保護庁(EPA)長官 「人間活動が地球温暖化の主要な要因との見方に同意しない」と『反温暖化』宣言。EPA長官の温暖化否定論はUNFCCC合意後初めて(RIEF) |

プルイット米環境保護庁(EPA)長官 「人間活動が地球温暖化の主要な要因との見方に同意しない」と『反温暖化』宣言。EPA長官の温暖化否定論はUNFCCC合意後初めて(RIEF)

2017-03-12 00:41:55

 

   米環境保護庁(EPA)のスコット・プルイット(Scott Pruitt)長官は、「人間活動が気候変動に及ぼす影響を巡っては非常に大きな意見の不一致がある。私は人間活動が地球温暖化の主要な要因との見方には同意しない」と、EPA長官として、初めて温暖化影響論を否定する立場を明瞭に示した。

 

 プルイット氏は温暖化否定論者として知られてきた。しかし、米上院の指名承認では明確な否定論は避け、「地球温暖化はでっち上げではない。実際に起きている」と述べるとともに、人類による温室効果ガスの排出と温暖化の関係には「ある程度影響はしているだろうが、議論の余地がある」とあいまいな表現をとっていた。

 

 今回の発言は、米EPA長官に就任後、ほぼ3週間が経過したことから、本来の自説に戻ったともいえる。米EPA長官として、温暖化に及ぼす人間活動の影響を「重要でない」と明言したのは1992年の気候変動枠組み条約(UNFCCC)の採択以来、初めてといえる。

 

 プルイット氏は今月9日、CNBCのSquawk Box programに出席。ホストの Joe Kernen氏から「CO2が気候変動の最も重要な要因と考えるか」と問われた。これに対して同氏は「人類の気候に及ぼす活動を正確に測ることは非常に挑戦的なことであり、その影響度については大きな不一致がある。私は、人類活動が地球温暖化の重要な要因だという見方には同意していない」と述べた。

 

Pruitt1キャプチャ

 

 EPAはこれまで、UNFCCCと同一のスタンスで、「温暖化問題は人間活動によって生じていることは科学的コンセンサスが得られてる」との立場に立ってきた。このため温暖化懐疑論者等がEPAのトップに立っても、科学的データや分析の結果を覆すことはできないとしてきた。

 

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2014年に公表した第5次評価報告書では、「人間活動が、20 世紀半ば以降に 観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高い」と結論づけている。日本を含む各国がこの評価に基づいて、国内の温暖化対策を推進している。

 

 プルイット氏の発言は、温暖化自体は認めたうえで、IPCCのレポートなどの指摘とは逆に、温暖化の原因とされる人間活動のウエイトを低くみる考えのようだ。同氏は「われわれは引き続き議論をし、評価と分析を続ける必要がある」と付け加えた。

 

 石炭などの化石燃料の使用による個々の発生源からのCO2の排出とその大気中での蓄積が、どのように、かつ、どの程度、台風や豪雨の増大、干ばつの頻発などの、個々の気候変動に影響しているのか、という点は確かに、明確な計測はできない。プルイット氏がそうした個別の原因結果関係の証明を求めているかどうかは、不明だ。

 

 同氏は、前職のオハイオ州司法長官時代から温暖化問題に疑問を示し、オバマ前政権が推進してきた石炭火力発電所規制(クリーン・パワー・プラン=CPP)の撤去を求める訴訟のリード役も務めてきた。それだけに、本来の立場を示しただけとの見方が研究者や、これまでの政策担当者、環境保護団体などには多い。

 

 Lawrence Livermore National LaboratoryのBen Santer氏は率直にいう。「プルイット氏は間違っている。無知(バカ)を選ぶことは選択肢にないのだ」。

 

 オバマ政権でホワイトハウスの科学技術政策を担当したJohn Holdren氏も同様に辛辣だ。「最大級の純粋な無知(バカということ?)。人間活動が温暖化を引き起こすことについて、科学的な疑問はない。多くの観測、評価、研究、分析、すべてが一致して人間活動によるCO2の増大が気候変動の要因であることを証明している」。

 

 EPAの前長官を務めたGina McCarthy氏は「科学の世界は実証可能な証拠によって検証される。信じることではない。EPAが彼を理解させるために、どんな追加的な情報を提供すればいいのか、ちょっと想像できない(バカにつける薬はないとのこと?)」とのコメントを出している。

 

 シェラクラブの代表、Michael Brune氏は「プルイット氏が議会で証言したように、気候変動を及ぼすCO2排出量の抑制を図るのはEPAの法的義務でもある。同氏はアメリカの家族を危機にさらしており、賢明な上院議員であれば、彼をEPA長官のポストから直ちに降格させるべきだ」と強調している。