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欧州議会、EU改正株主権利指令案を賛成多数で可決、成立へ。ESG評価に基づく長期視点の経営を支援。経営者の高額報酬への株主の機能も強化。米国型の短期収益中心の資本主義からの脱皮目指す(RIEF)

2017-03-14 23:30:15

EP1キャプチャ

 

  欧州議会本会議は14日、欧州連合(EU)の株主権利に関する指令(Directive)の改正案を賛成多数で可決した。改正指令案はESG要因を強化し、企業経営者の報酬の透明性と監視機能を強化するとともに、効率的な株主エンゲージメントの促進を目指す内容だ。米国型の短期収益至上の株主権利と一線を画する方向を示した形だ。

 

 本会議での票決は賛成646、反対39、棄権13で、圧倒的多数で承認された。指令案はこの後、閣僚理事会で正式に承認された後、成立する。

 

 今回の改正案は、株主権利を長期的な視点で企業経営に関与することを目指した。そのため企業、産業界の反発も強く、EU内での調整は難航した。しかし、昨年末に、欧州議会、欧州委員会、欧州理事会の3者協議で合意が形成された。

 

 米国の株主権利が四半期ベースの短期的視点に集中しがちなのに対して、EUでは長期的な株主による経営へのエンゲージメントの権利を促進し、コーポレートガバナンスの基本と経営者のスチュワードシップ課題等を明確に組み込んだのが特徴だ。

 

 特に米国企業で問題化している経営者の高額報酬に対しては、株主が企業の業績や長期的な関与などと、より密接に関連する形で株主総会で投票承認ができるように改正している。また、経営者に対して株主との対話を促進するとともに、株主の株主総会への出席や投票の権利行使を容易にすることを盛り込んでいる。

 

EP2キャプチャ

 

 また経営者が、株主に不利になる可能性のあるような取引を結ぶことを制限するため、そうした可能性のある取引についての情報開示の義務化と、株主と企業利益を保護する保証手続きの導入等を求めている。

 

 議決権行使会社についても、株主総会等での行動に関する重要な情報を開示しなければならないとしている。彼らが株主行動をとる根拠となる主要な情報については、その情報源や適用する方法論等について、一般株主にも開示しなければならなくなる。

 

 欧州委員会の正義・消費者・ジェンダー平等担当委員Věra Jourová 氏は本会議で発言し、「改正指令案は、欧州全体を通じて、より長期で、より透明で、より持続可能な資本市場を発達させることにつながる。機関投資家や資産運用機関には、ESG要因を評価した長期の視点での投資を促すことになるだろう」と強調した。

 

 改正指令が閣僚理事会で承認されると、EU加盟国は指令に基づいて各国法を2年以内に改正することを求められる。