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ネスレ日本、コーヒー飲料製品の輸送の一部を、トラック便から船便に変更。AI需要予測システムを活用し、4月から。コスト削減、運転手不足にも対応。CO2排出量は半減(各紙)

2017-03-22 15:49:10

Nestleキャプチャ

 

  各紙の報道によると、ネスレ日本は天候によって売れ行きが左右されがちなコーヒー飲料製品の輸送を人工知能(AI)を使って予測するシステムの導入とともに、輸送の効率化のため、トラック輸送から船便への切り替えを進める。船便の場合、時間がかかるがAIシステムによって需要予測が容易になることで、コスト的にも有利と判断した。同時に、CO2排出量も半減できるという。

 

 日本経済新聞が報じた。AIを活用した需要予測システムは、日本気象協会と連携して、天候の変化を商品需要予測に組み込んだもので、4月から本格稼動する予定だ。主力商品のひとつのコーヒー飲料の配送に適用する。すでに、同社の主力工場である、姫路、島田、霞ヶ浦の各製造工場から北海道や九州などの遠方の消費地に向けた配送に関して、小売りの大手スーパーなどとの間で、トラック便から船便への切り替えを承諾してもらう交渉を始めている。

 

 気象協会は、蓄積した気象データや予測手法を活用して、2週間先の天候見込みやPOS(販売時点情報管理)データ、交流サイトに投稿された暑さや寒さを表す表現などのデータを下に、市場の需要を予測し、データを提供する事業を始める。ネスレは同業他社が同協会のシステムを試行利用した結果、予測が実需に近い範囲に収まる確率が97%と高かったとの情報が得られたことから、同システムの本格導入を決めた。

 

 製造工場から各小売事業者への飲料製品等の配送は、従来から、機動力のあるトラックを活用してきた。特に出荷先の大半を占めるスーパーなどの小売大手への直送はすべてトラック便としてきた。しかし、トラック輸送は人手不足や配送量の増大などから、輸送料金が上昇しており、また道路事情による混雑の増加などの課題も高まっている。

 

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 そこで、AIシステムの活用で需要予測の精度が増すことから、コーヒー飲料輸送の一部について、トラック便から船便に切り替えることを決めた。ネスレ日本では、製品1t当たりのエネルギー消費量を2015年時点で2005年比25%削減の目標を立てていたが、29%削減の超過達成を記録している。今回の輸送システムの効率化と輸送手段の切り替えは、エネルギー消費量削減とCO2削減に、一段と貢献する期待がある。

 

 コーヒー飲料は重量があるため原価に占める運搬費の比率が相対的に高い。需要のピークは毎年7~8月の夏場で、夏を超えた後、気温の低下とともに減っていく。飲料業界では、この需要のピークと減少の店舗を的確に把握することが、極めて重要になっている。天候の変化と需要の動向を見誤ると、売り逃しや過剰在庫の原因になる。

 

 トラック輸送はそうした販売上の機動力の重要な戦力だが、運転手の高齢化や道路の混雑事情などが深刻な課題でもある。これに対して船便は北海道や九州などへの配送には最短でも3日はかかる点が難だが、新システムの効果で需要を的確に予測できれば、むしろ経営的にも、また環境負荷の低減といった点でも有利になり、輸送手段の多様化につながる。

 

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