HOME |環境NGOら43団体、バイオマス発電の拡大に懸念を表明。「森林をエネルギー源としてみるだけでは『カーボンニュートラル』にならない」(RIEF) |

環境NGOら43団体、バイオマス発電の拡大に懸念を表明。「森林をエネルギー源としてみるだけでは『カーボンニュートラル』にならない」(RIEF)

2017-03-22 22:45:24

forestキャプチャ

 

 再生可能エネルギーの一つとしてバイオマス発電への関心がグローバルに高まっているが、世界の環境NGOなど43団体が、バイオマス発電の持つネガティブな影響を考慮すべきだとする共同書簡を国連の食糧・農業機構(FAO)に提出した。

 

  共同書簡は、FAOの事務局長宛てに発信された。その内容は、バイオエネルギーの利用増大は、同時に、環境や地域コミュニティ、住民の健康、気候変動、そして森林の生育自体等に影響を与えることを考慮して対応しなければならない、との立場に基づいている。

 

 書簡には、Birdlife Europe、Friends of the Earth Europe、 the International Tree Foundation、the Global Forest Coalitionなど の環境NGOや自然保護団体、住民団体などが名を連ねている。

 

 バイオマス発電は再エネ発電と位置付けられ、わが国でも固定価格買い取り制度(FIT)の対象となっている。しかし、共同書簡は「気候変動の緩和戦略の一部としてエネルギー生産面でバイオマスを活用することは、間違った科学(Flowed science)によるもので、解決策を見出す以上に問題を引き起こしている」と強い調子で批判している。

 

 書簡が指摘するように、FAOは Collaborative Partnership on Forestsとともに、エネルギー源としての森林の利用促進のキャンペーンを展開し、森林を「自然の電力源」と位置付けている。グローバルに森林を再エネ発電の最大の供給源にすることを目指している。

 

 しかし、自然保護団体などは、森林をエネルギー源としての観点だけでみることに警告を発している。大規模な産業用のバイオマス発電などのために森林を燃料源とすることは、すでに各地で森林の破壊を促進し、気候変動をも加速することにつながっていると指摘している。

 

 特に欧州連合(EU)が掲げる現行の再エネ目標は、おおよそ1億立方メートルの森林をエネルギー源として使用することにつながっている。その結果、森林が本来、保有するCO2の吸収と保存機能を削減してしまうリスクがあると警告している。つまり「カーボンニュートラル」にならない、との指摘だ。

 

 さらに、森林をエネルギー源とする需要が大規模になればなるほど、間伐材などの森林資源の補完的な部分の利用ではまかないきれなくなる。次第に、品質のいい森林資源もエネルギー源に転用され、それでも足りなくなって、すでに米国やロシアなどの森林から輸入されている。

 

 この点は、EUだけでの出来事ではない。日本や韓国、オーストラリアなどの他の国々も同様に、海外の森林資源に頼る傾向を強めている。特に、日本の最近の大規模なバイオマス発電事業は、東南アジアからの木材チップやPKSなどの輸入資源を前提として建設される事例が増えている現状を言い当てている。

 

 森林をエネルギー資源としてのみ見る傾向を前提として、アフリカや南米では、成長の早い樹種に特化したモノカルチャー的な森林プランテーションが拡大している。しかし、こうした自然の多様性を無視した土地利用は、結局は、森林破壊や劣化につながり、また自然の森林を生活の一部としている地域住民の生活の場を奪っている、と指摘している。

 

 共同書簡は、バイオマス発電がこうしたいびつな構造を引き起こすのは、森林資源をエネルギー源として活用することが、気候変動にマイナスの影響を及ぼさない、との間違った仮定に基づく政策をとっているため、と分析している。

 

 そうした間違った仮定が出てきたのは、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のガイダンスについての重要な誤解と誤読によって、「すべてのバイオエネルギーはカーボンニュートラル」との見解が広まってしまったため、とみる。各国際機関のうちでも、特にFAOは「カーボンニュートラル神話」に絡め取られ、森林をエネルギー源としてのみとらえていると批判している。

 

 さらに、発展途上国では森林資源を日常生活の食事のクッキングや熱源に利用しているが、これらの伝統的な利用法を、欧米などでは健康に悪い影響を与えるものと理解している。国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、クリーンなエネルギーの将来のためには、こうした利用法は、解決策というより問題点とみなされている。

 

 共同書簡はこうした諸点を指摘して、FAOのバイオマス発電推進の活動の再検討を求めている。FAOの政策変更要請としては、次の4点をあげ、回答を求めている。

 

 第一番目は、大規模なバイオマス発電の支持と促進を中止すること。第二点は森林資源を利用するバイオマス発電がカーボンニュートラル、あるいは持続可能なものとして、誤って表現することの中止。

 

 第三点目は、森林の資源効率的な使用と、中長期のカーボン貯留に貢献する森林の複層的な保全を支援すること。第四点は、生物多様性が保持されるよう森林のエコシステムを再生・保全する視点で森林エネルギーを再評価すること。

 

 こうした4点を森林政策に盛り込むことで、単に木を燃やすだけでなく、より総合的に、より包摂的なやり方で、森林資源の利用を気候変動の緩和に役立たせることができるだろう、と述べている。日本の農林省・林野庁の見解も聞きたい。

http://internationaltreefoundation.org/open-letter-fao/