東燃ゼネラルと関西電力 千葉・市原市での100万kWクラスの石炭火力発電建設計画を断念。新規計画の中止は初めて(RIEF)
2017-03-24 12:42:29
東燃ゼネラル石油は関西電力系の関電エネルギーソリューションと共同で計画していた千葉県市原市での東燃ゼネラル敷地内での石炭火力発電所(約100万kW)の事業化を断念する、と発表した。関電系の石炭火力発電計画の断念は、今年1月の兵庫県赤穂市での赤穂発電所の改造計画断念についで2件目。新設計画の中止は初めて。
両社は、2015年8月、市原市に「市原火力発電合同会社」を折半出資で設立、市原市にある東燃ゼネラルの千葉工場の敷地内で、石炭火力発電所を新設し、首都圏向けに供給する計画を進めてきた。http://www.itpgeneration.co.jp/
しかし、地元ではCO2排出増加やその他の大気汚染物質の増大につながるとして住民から反対の声があがっていたほか、国が目指す2030年のCo2削減計画との整合性についても疑念が示されていた。15年の環境影響評価配慮書に対しては環境省が「是認できない」との意見書を出した案件でもある。
今回、両社は計画断念の理由として「同プロジェクトの事業性および事業環境の変化等に関する両社の見解を踏まえ、今後、プロジェクトの事業化に向けた検討を継続しない」と説明している。
今回の決定に先立って、関西電力は今年1月、兵庫県赤穂市にある重油・原油を燃料とする赤穂火力発電所を石炭火力に変更するためのリプレース(改造)計画を進めていたが、省エネの進展によって電力需要が減少しているほか、温暖化対策強化等を理由として断念している。http://rief-jp.org/ct4/67507
わが国のエネルギー政策では、東京電力の福島原発事故にもかかわらず、経済産業省が原子力発電所の再稼動を推進する一方で、原発稼動が進むまでの間の電力需要に対応する手段として再生可能エネルギーよりも、石炭火力を重視する姿勢を打ち出してきた。これは再エネ普及が進むと温暖化対策にも資することになり、原発再稼動推進の理由のひとつを失う可能性があるため、とみられる。
石炭火力の場合、建設期間や燃料調達等の点で経済的に有利な点があげられ、電力小売市場自由化の影響もあって、2012年以降だけで49基の石炭火力の新規案件が各地で計画されてきた。しかし、産業界、家庭の省エネ対応が進み、原発再稼動が進まなくとも、電力需要は夏場を含めて満たされており、石炭火力による追加的な電力供給の必要性に逼迫感はないのが現状になっている。まさに、両社が指摘する「事業性および事業環境の変化」という状況が生じているわけだ。
環境NGOの機構ネットワーク(KIKO)は、今回の決定について「経済合理性の観点からも、CO2や大気汚染物質の排出による社会的・環境的な問題からも、本計画は中止すべきものだった。今回の事業者の極めて良識的かつ真っ当な判断を歓迎する」と評価している。
さらに「パリ協定のCO2削減目標に照らせば、石炭火力の新規建設だけでなく、既存の石炭火力についても閉鎖していくほかない。世界では『脱石炭』への勢いが加速化しており、石炭産業に対する投融資撤退運動(Divestment)の輪も広がり、化石燃料関連資産は座礁資産化している」とエネルギー関連産業に化石燃料依存構造の是正を呼びかけている。
https://www.tonengeneral.co.jp/news/press/uploadfile/docs/20170323_1_J.pdf