トランプ米大統領 オバマ前政権の温暖化対策の象徴である石炭火力規制の「クリーン・パワー・プラン(CPP)」廃止の大統領に28日にも署名。プルイット環境保護庁長官が明らかに(RIEF)
2017-03-27 12:00:03
トランプ米大統領は28日に、オバマ前大統領が推進していた石炭火力発電を規制する「クリーン・パワー・プラン(CPP)」の効力を停止する大統領令に署名する。環境保護庁(EPA)長官のスコット・プルイット氏が明らかにした。大統領はエネルギー企業が海外政府への資金提供情報を開示する義務規定を削除する法案にも署名しており、大統領選挙の公約通り、石炭・エネルギー産業重視の政策を具体化することになる。
プルイット氏は26日にABCの番組に出演、質問に答える形で述べた。同氏はパリ協定について「悪い取引(bad deal)だ」と一蹴し、オバマ政権が定めた自動車排出量規制基準についても「環境に逆効果」と批判した。これらの前政権の政策批判に続いて、オバマ政権の温暖化政策の柱となっているCPPの廃止を明言した。
同氏は大統領のCPP廃止令への署名を公表するとともに、「この大統領令は、われわれが成長重視の視点とバランスのとれた環境政策を進めることを明確にするものだ」と強調した。CPPは、石炭火力発電所からのCO2排出量を30%削減することを各州の規制で実施する内容。これに対して、オクラホマ州の司法長官時代のプリット氏は、連邦議会の権限を無視したもので違法だとして、訴訟を起こしている。
同氏はCPPを廃止令に署名する大統領の意図について、「米国はオバマ政権下で長い間、『成長を求め、雇用を求めることは、反環境行動だ』という物語を強いられてきた。しかし、すでにわれわれは環境対応で大きな前進をしており、雇用対策と環境対策を両方とも達成できる。オバマ時代の反化石燃料戦略は、全米の雇用削減につながっていた」と指摘した。
自動車の排ガス規制の強化は今月から始まった。新車の燃費性能について、それまでの1ガロン当たり27.7マイルから、2025年までに、ほぼ倍の54.4マイルに引き上げるという規制で、これもオバマ政権の環境政策の成果とされる。これによって新車のライフタイム全体でのCO2排出量を60億㌧削減することができ、2025年までに1日当たり200万ガロンの石油を節約できるという。
しかし、プルイット氏は、「われわれは人々が本当に買いたいと思うような車の燃費効率を重視すべきだ。実施された規制では、だれも新しい車を買おうとしなくなるだろう」は批判した。
トランプ大統領はすでに環境重視の政策を転換する大統領令に署名している。その一つが、ドット・フランク法に盛り込まれているエネルギー企業による海外の政府への資金供与情報の開示義務の停止を定める法案への署名だ。
同法案は下院共同決議案41(「Congressional Review Act (CRA)」)と呼ばれる。金融規制を包括的に定めるドット・フランク法には、エネルギー企業が海外での開発権限確保のため、資源国政府の高官らに便宜を図ってもらうための賄賂等の提供を禁じる条項(Cardin-Lugar Amendment) が盛り込まれている。実際には同条項は十分に機能していないとの批判もあるが、CRAは同条項の削除を定めている。
現行法では、証券取引委員会(SEC)が上場エネルギー企業に対して、海外政府関係への資金の支払情報の開示を義務付けている。しかし、トランプ大統領は、同規定が、エネルギー産業の活動を阻害してきたと批判。条項削除によって、「エネルギー産業の雇用が増える」と評価している。ただ、同様の規定はカナダや欧州連合(EU)でも定められており、さらに大手エネルギー各社は、複数の国で上場していることから、米国内だけでの規制緩和の効果は限定的との見方もある。
しかし、相次ぐトランプ政権によるオバマ政権下の環境政策見直しの動きは、オバマ政権の環境政策のシンボルでもある「パリ協定」の取り扱いに焦点が移っていきそうだ。
https://www.congress.gov/bill/115th-congress/house-joint-resolution/41/text