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環境省「環境省版グリーンボンドガイドライン」公表。国際ルールとは別に、国内市場向けでかつ環境面だけを評価(RIEF)

2017-03-29 16:00:54

MOegreenbondキャプチャ

 

 環境省は28日、「グリーンボンドガイドライン2017年版」を公表した。グリーンボンドについては、先進国の国際市場で共通基準となっている市場ベースの「グリーンボンド原則(GBP)」が使われているが、環境省は「わが国のグリーンボンド普及は、十分ではない」として、GBPに対抗する形で、「日本の特性に即した解釈を示す」としてまとめたとしている。

 

 グリーンボンドという金融商品の「ガイドライン」を、財務省や金融庁とは別に、環境省がとりまとめることについて、同省は「環境省設置法に基づく」と説明している。その一方で、「ガイドライン」の冒頭で複数の免責事項を強調している(下部を参照)。

 

 いわく、「法的拘束力はない」「投資判断や財務に関する助言ではなく、取得等を推奨するものではない」「資金充当対象事業の環境改善効果を証明するものではない」「ガイドラインに関連して発生するすべての損害、損失または費用について何ら責任を負うものではない」--。

 

 国際的なGBPのガイドラインは①調達資金の使途②プロジェクトの評価及び選定のプロセス③調達資金の管理④レポーティング、の4点を基本項目(守るべき最低基準)としている。それらの適用の妥当性は、レポーティングによる情報開示や外部機関等による第三者評価によって担保し、それを投資家が判断するという通常の債券と同様に市場ベースの仕組みになっている。

 

 これに対して、環境省「ガイドライン」は「べきである」「望ましい」「考られる」の3種類の概念を示し、「あくまでも例示」「これらに限定するものではない」などの注記をつけながらも、行政が考える具体例を示す形となっている。また「べきである」とした事項についても、必ずしも満たさなくてもいいとの立場を強調している。発行体に配慮したとみられる。

 

 「ガイドライン」は、環境改善効果の評価や、その評価の投資家へのレポーティングが十分でなくても、資金が環境改善効果のある事業に確実に充当されるならば、有効としている。ただ、情報開示が十分でない案件の資金が適切に使われているかどうかを、誰がどう判断するのかについては触れていない。

MOEgrenbbondキャプチャ

 

 このように、GBPに比べて非常に細かい条件付けをする一方で、発行体への配慮を優先しようとしているためか、現実の運用とかけ離れた記載が随所にみられる。

 

 もう一つの論点だったのが外部機関の第三者評価の扱いだ。GBPは発行体の情報開示等をチェックする第三者評価について、特定の方向感を示していない。だが、環境省「ガイドライン」は、「外部機関が備えることが望ましい性質」など、仔細に条件付けを行っている。外部評価機関を同省管轄の関連業界と位置づけようとしているようだ。

 

 外部評価機関について、ガイドライン案の段階では、環境省と関係の深い監査法人・公認会計士業界に偏重した記載が盛り込まれていたが、外部からの指摘を受けて、「あくまで例示」と限定した。

 

  国際的ガイドラインのGBPとは別に、国内の「ガイドライン」を設けている国は、現状では国内債券市場の成長が遅れている中国、インドなど途上国に限られている。環境省の「ガイドライン」を見る限り、詳細な記述ぶりは、中国の人民銀行が公表したガイドラインをモデルにしているように思える。違いは、中国版には事実上の法的拘束力がある点だろう。

http://www.env.go.jp/index.html