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英非営利団体Climate Bonds Initiative(CBI)、国内ガイドライン適用の中国のグリーンボンド3件について「グリーン性に問題あり」として、CBIのデータベースから除外(RIEF)

2017-04-04 01:36:48

CDBキャプチャ

 

   グリーンボンドの基準・認証を推進する団体の一つである英「Climate Bonds Initiative(CBI)」は、 中国で最近発行された3つのグリーンボンドについて、国際基準と照らして「グリーン性」に問題があるとして、自らが登録するグリーンボンドのデータベースから除外したことを明らかにした。

 

 グリーンボンドの国際基準としては、国際金融機関が自主的に制定した「グリーンボンド原則(GBP)」と、CBIが開発した「Climate Bonds Standard(CBS)」がある。これとは別に中国では、中国人民銀行(PBoC)と国家発展改革委員会(NDRC)がそれぞれ国内版のガイドラインを制定しており、今回、3発行体はそれらに基づいてグリーンボンドを発行した。

 

 CBIが「グリーン性に疑義あり」と指摘したのは、まず、香港証券取引所上場の不動産会社、Longfor Propertiesが発行した10億人民元のグリーンボンド。同ボンドの資金使途の70%は、上海市内でのビルやホテル、商業施設などへの投資で、グリーンビルディング基準で星二つ(LEEDのシルバー格)以上の評価を受けた事業を対象とする。

 

 しかし残りの30%は一般的な事業活動に充当される。NDRCが定める国内企業向けのグリーンボンド基準では、資金使途の50%まで一般事業に回していいとなっている。これに対して国際基準のCBSやGBPなどでは、資金使途の95%はグリーン事業に振り向けることを求めている。

 

 次に、廃棄物処理などの事業展開を行う東江環境(Dongjiang Environment)発行の10億人民元のグリーンボンド。同ボンドの調達資金のうち過半の5億4000万元は、CBSに沿った廃棄物発電、リサイクル事業等4事業に充当される。しかし、残りの4億6000万元が投じられる7事業には、地中ガス吸収プロセスのない埋め立て事業などが含まれるという。しかもボンドの第三者評価は付与されていない。

 

 3つ目は国有銀行の国家開発銀行(China Development Bank)が発行した50億人民元のグリーンボンド。大気汚染防止を目指して、省エネ、クリーン公共輸送機関等9事業への投資を目指している。CO2排出量は13万7000 ㌧削減されるなどの定量的目標を示している。

 

 しかし、資金使途の中に、小規模な石炭火力発電所を最新式の大規模石炭火力に切り替える事業が入っている。PBoCの国内金融機関向けガイドラインでは、効率的な石炭火力は「クリーン・コール」としてグリーンボンドの資金使途に入れている。だが、GBPやCBSの基準では対象外。同ボンドには監査法人のPwCが外部評価をつけている。

 

 CBIは中国のグリーンボンド市場づくりをこれまで多様な角度から支援してきている。ただ、中国の国内市場の拡大を支援する一方で、国内事情を優先した中国版ガイドラインの適用に対しては、厳しく峻別する姿勢をとっている。つまり、GBPやCBSに合致しない国内ガイドラインで認められても、国際的な投資家からは「二流のグリーンボンド」とみなされるわけだ。

 

 日本でも環境省が「環境省版グリーンボンドガイドライン」という国内版をこのほど公表した。その内容は、GBPが示す最低基準の4項目を満たさなくてもグリーン性を認める、という“柔軟”な内容だ。これは国内でのグリーンボンドの発行が少ない現状に配慮した発行体寄りの姿勢とされる。ただ、環境省版に沿ってボンドを発行した場合も、国際的には中国と同様、「二流のグリーン」とみなされる可能性もある。

https://www.climatebonds.net/blog