HOME8.温暖化・気候変動 |欧州議会、東南アジアでの熱帯雨林不法伐採を抑えるため、バイオ燃料へのパーム油混入禁止法案を賛成多数で可決。インドネシアなどは猛反発。環境規制が貿易摩擦に転じる懸念も(RIEF) |

欧州議会、東南アジアでの熱帯雨林不法伐採を抑えるため、バイオ燃料へのパーム油混入禁止法案を賛成多数で可決。インドネシアなどは猛反発。環境規制が貿易摩擦に転じる懸念も(RIEF)

2017-04-13 18:16:35

bioenegyキャプチャ

 

   欧州議会は先週、欧州連合(EU)域内の公共交通機関が使用するバイオ燃料に、パーム油などの植物性オイルを混ぜることを禁じる法規制に賛同した。パーム油を産出する東南アジアなどでの過剰な森林伐採に歯止めをかけるのが目的だ。これに対してインドネシアやマレーシアなどの原産国は、「EUの農業者を守るための保護主義的貿易障壁」と強く反発している。

 

 欧州議会が賛同した法規制案は、2020年までにバイオ燃料の原料にパーム油などの植物性油の含有を認めないことを盛り込んでいる。近年、パーム油生産のために東南アジアの原生林を皆伐する生態系破壊が問題になっていることへの対応でもある。

 

 新たなパーム油規制案は、持続可能性の最小限のクライテリアの設定をはじめ、関税規制の改善、反森林伐採規制条項の採択など、包括的な法規制の実施を求める内容。欧州議会の票決では、640対18の大差で承認された。今後、欧州委員会と閣僚理事会での最終調整を経て、法規制になる予定だ。

 

 EUでは、パーム油をはじめとする大豆や牧畜などの農業活動によって、東南アジアの熱帯雨林が不正に皆伐され、その比率は熱帯林伐採の65%にも達しているとの批判が出ている。また皆伐のため、森林を焼き払い、その煙害で、年間10万人以上が呼吸器疾患等で死亡しているとの指摘もある。

 

 こうした不正伐採による強制的なパーム油植林への転用の結果、熱帯雨林が保有している温暖化ガス吸収源機能が破壊され、その規模は、EUが年間化石燃料の燃焼で排出するCO2量の4分の1相当の1.47G㌧のCO2の放出と同じになるという。

 

 こうしたことに加えて、EUは、国連が2030年を目指して提唱している持続可能な開発目標(SDGs)の達成のためにも、熱帯雨林伐採に歯止めをかけ、持続可能な森林を回復する必要がある、と指摘している。

 

 今回法案を可決した欧州議会で、パーム油問題の報告者を務めたKateřina Konečná氏は、「欧州議会は、この問題で黙っていることはもはやできない。欧州議会自体が行動を起こすタイミングにきている」と強調した。欧州再生可能エタノール協議会事務総長のEmmanuel Desplechin氏も「われわれは欧州議会に対して新規規制のための必要事項の整備などを正確に記し、パーム油が輸送燃料に活用される際の限度を明確にするべき」と市場のルール化の必要性を示している。

 

 英国の「ロンドン動物学ソサイエティー」によると、主要企業が抱えるグローバルなパーム油の総保有資産のうち、ほぼ100万ha分は資産に計上されず不正に森林伐採によって開発されている、と指摘している。

 

 こうしたEUの主張に対して、パーム油の原産国であり、輸出国であるインドネシアやマレーシア、コスタリカ、エクアドルなどの7カ国は、「パーム油の輸入規制は、EUによる明らかな貿易障壁だ」と強い反発を表明している。法案が正式に成立するようだと、世界貿易機関(WTO)への提訴も辞さない構えだ。

 

 各生産国での多くのパーム油生産者は大規模プランテーション企業の下請けだ。このため、地元の貿易団体は、輸出禁止や、燃料含有禁止の措置がとられると、パーム油生産者の40%を占める下請け小規模生産者に、しわ寄せが生じる懸念を示している。

 

 インドネシアでパーム油の最大生産者である Golden Agri-Resourcesの持続可能担当の副総裁を務めるAnita Neville氏によると、「EUは規制をかけるよりも、むしろ持続可能性の観点でのパーム油以外の使用・消費を促進するべき。EUは規制を広げるだけではなく、もっとパワフルなインセンティブを拡大できるはずだ」と、EU側に政策アプローチの転換を求めている。

 

 国連開発計画(UNCTAD)の担当者も、EUの規制が実現すると、環境に配慮した森林経営をしている東南アジア等の事業者も市場から締め出すことになりかねないと、憂慮を示している。

 

 EU自体の温暖化対策自体の影響が、熱帯雨林の違法伐採やパーム油農園拡大の背景にあるとの指摘もある。2010~2014年の間に、欧州への商品輸入の45%はバイオ燃料用のパーム油だったという。EUがCO2含有の少ない燃料を求めることが、結果的に東南アジアのパーム油農園拡大や原生林の不正伐採等につながってきたとの指摘だ。

 

 バイオ燃料のほぼ4分の3に相当する第一世代のバイオ燃料は、主に食物から生産されている。このためEUはこの比率を2030年までに半減させる方針だ。問題は、パーム油等の植物由来のバイオ燃料の使用を減らした場合、減少分を何で埋め合わせるのか、という点にある。

http://www.europarl.europa.eu/news/en/news-room/20170306STO65231/palm-oil-the-high-cost-of-cultivating-the-cheap-vegetable-oil