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ニュージーランドが韓国とカーボン市場づくりで共同委員会設置で合意。対中国に続く。アジア・太平洋地域でのカーボン市場づくりを目指す。日本は「不在」のまま(RIEF)

2017-04-15 01:12:12

NZキャプチャ

 

 アジア・太平洋地域でのカーボン市場づくりが動き出した。ニュージーランドと韓国は、同地域でのカーボン市場を開発する共同議論を開始したと発表した。ニュージーランドは3月に、中国ともカーボン市場づくりの共同行動計画に署名している。国ベースの排出権取引制度を導入できない日本を除外する形で、地域間協力の枠組みが形成される勢いだ。

 

 ニュージーランドの気候変動大臣、Paula Bennett氏によると、同国と韓国は、両国の自由貿易協定(FTA)の下での共同行動として、カーボン市場づくりを検討する環境委員会を発足させた。両国とも国内で温室効果ガス対策の排出権取引制度を設けており、両国の市場を連携することで、カーボン取引の円滑化を目指す案も出ているという。

 

 ニュージーランドは3月27日、同国を訪問中の李克強中国首相と、ニュージーランドのビル・イングリッシュ首相が、カーボン市場の育成などで緊密な協力強化をうたうなどの共同気候変動行動計画に署名している。両国は2014年にニュージーランド・中国気候変動協力協定を結んでおり、その協定を踏まえて、協力関係を深める形だ。http://rief-jp.org/ct6/68736

 

Paula Bennett氏
Paula Bennett氏

 

 ベネット氏は、「我が国はカーボン市場の潜在的パートナーとなり得る国々と、市場づくりの議論を深めたい」と、中国、韓国との二国間交渉の狙いを説明している。またニュージーランドがCOP21で「カーボン市場に関する閣僚宣言」を主導した際、韓国も宣言に早期に賛同したという関係もある。

 

 両国は、自らが共同主催者として、6月にも他のアジア・太平洋諸国に呼び掛け、「アジア太平洋カーボン市場ラウンドテーブル」と呼ぶ国際会議をソウルで開く予定という。

 

 3か国はいずれも温室効果ガスの排出権取引を実施中、もしくは実施予定という点で、共通の政策課題を抱えている。まず、ニュージーランドは2008年に森林部門を対象に温室効果ガスの排出権取引制度を始めている。その後、産業部門、廃棄物部門、農業(牧畜を除く)部門などに拡大している。

 

 国の経済規模が小さいことから、排出権取引市場も小さいが、これまでに国内のクレジットを外国政府に売却したり、途上国のクリーン開発メカニズム(CDM)からのクレジット(CER)を輸入するなど、クレジットの国際取引については経験豊富だ。

 

 一方、韓国は2015年から排出権取引制度の第一次計画期間を実施、来年から第二次計画に移行する予定となっている。2018年からの第二次計画では、従来は企業各社に全量無償で割り当てていた排出権配分に一部、競売による有償割当を導入する方針。

 

 さらに中国は、今夏にも全国規模の排出権取引制度をスタートさせる予定。中国の取引市場の規模は欧州連合(EU)のEU-ETSを抜いて、世界最大のカーボン取引市場になるとみられる。それぞれ、排出権取引の発展段階に違いはあるが、同じ制度を運営していることで、市場・取引の安定性をどう確保するかという共通課題を抱えている。

 

 ニュージーランドを軸とする、対中、対韓のカーボン市場づくりは、自ずと3か国共通の議論に発展するものとみられる。現在のところ、排出権取引制度を導入しているアジア・太平洋地域の国はほかにはないが、オーストラリアはいったん導入を決定後、撤回し、現在は排出削減基金を利用したクレジット買い取りの仕組みがある。またタイなども世銀の支援で排出権取引制度導入の検討を進めている。

https://www.beehive.govt.nz/release/korea-and-new-zealand-discuss-carbon-markets